モルナ
カーボベルデの郷愁的な歌曲で、奴隷貿易の集積港の歴史を背負い、移民とソダーデ(郷愁)を歌う国民的ジャンル。
どんな音か
モルナは静かな弦楽器の伴奏(アコースティックギター、ヴィオラ、カヴァキーニョ)の上に一人の歌い手が乗る。テンポは遅く、曲の多くは4分の3拍子か4分の2拍子で書かれている。声は感情を押しつけず、しかし言葉の一音一音に重みを込める。Cesária Évora(セザリア・エヴォラ)の歌声は低音域に厚みがあり、高音域でも力まない。弦楽器は旋律の隙間を埋めるのではなく、歌の後から静かについていく。ソダーデ(saudade に相当するクレオール語 saudade)という言葉——遠くにあるものへの深い郷愁——が歌詞の核にあり、故郷の島、去っていった恋人、帰らぬ船乗りが題材になる。
生まれた背景
聴きどころ
Cesária Évora「Sodade」(1992)では、曲が始まってから歌い手が声を出すまでの弦楽器だけの時間に注目してほしい。その静けさの中に入ってくる声が、どれだけ自然に空間と溶け合っているか。旋律は単純だが、歌い手が音の終わりをどこで止めるか(または伸ばすか)によって感情の色が変わる。
発展
1990年代にセザリア・エヴォラがフランス・レーベルのリズム・ミュージックから国際デビューしてから世界的に知られ、2003年のグラミー受賞で最高潮を迎えた。彼女の死後はマヤラ・アンドラージやエルアウトラといった次世代が継承し、2019年にはモルナがユネスコ無形文化遺産に登録された。
出来事
- 1900s: エウジェニオ・タヴァレスが詩的洗練を確立
- 1992: セザリア・エヴォラ『ミス・ペルフュメイダ』
- 2003: 同『ヴォス・アミーガ』でグラミー受賞
- 2019: ユネスコ無形文化遺産登録
派生・影響
コラデイラ、ファド、ブラジル・モジーニャ、アンゴラ・センバと相互影響。
音楽的特徴
楽器ヴィオラ、カヴァキーニョ、クラリネット、ピアノ、声
リズム緩やかな2/4、悲歌調、クリオール語
代表アーティスト
- Cesária Évora
- Mayra Andrade
代表曲
- Besame Mucho — Cesária Évora (2003)
- Sodade — Cesária Évora (1992)
- Storia, Storia — Mayra Andrade (2010)
日本との関係
初めて聴くなら
豆知識
Cesária Évora は舞台での靴を履かない習慣があり、これは「貧しいカーボベルデの人々と同じ目線で歌う」という姿勢を示したものとされる。「はだしの歌姫」という愛称はここから来ている。カーボベルデ政府は彼女の死(2011年)後に空港に「Cesária Évora International Airport」と命名し、現在もその名が使われている。
