伝統・民族

フナナ

Funaná

サンチャゴ島 / カーボベルデ / 西アフリカ · 1930年〜

カーボベルデ・サンチャゴ島の農村で生まれ、独立後に解禁・電化された、アコーディオンと鉄棒で駆動するアフロ・カリブ的なダンス音楽。

どんな音か

ガボン(蛇腹楽器)と呼ばれるダイアトニック・アコーディオンが高速で駆動する。アコーディオンが右手で速いフレーズを刻みながら左手でリズムを叩き出す一方、フェロ(ferro)と呼ばれる鉄の棒——刃物や包丁の背面を別の金属で擦る打楽器——が一定のパルスを刻む。テンポは速め(120〜150BPM)で、二つの音の組み合わせだけでフロアを動かす設計になっている。歌は単純なコールアンドレスポンスが多く、クレオール語(カーボベルデ固有のポルトガル語系クレオール)の歌詞は農村の日常や恋愛、植民地支配への皮肉を混ぜて歌う。Bitori(Victor Tavares)の演奏では、アコーディオンのベロシティが随所で急変し、聴いている側の体が自然に揺れるような引力がある。

生まれた背景

カーボベルデはポルトガルの植民地として数百年間支配され、アフリカ大陸西端から沖合500kmに浮かぶ島国だ。フナナポルトガル統治時代、特に農業労働者が多かったサンチャゴ島の内陸部で発展したとされるが、当局からは「粗野な庶民の音楽」として長く禁じられるか軽視されてきた。1975年の独立後、文化的アイデンティティの回復運動のなかでフナナが「解放された」——Bitorが1980〜90年代に行った電化(アコーディオンを電子音響機材と組み合わせる試み)が国際的な注目を集めた。

聴きどころ

鉄の棒が打つリズムを最初に耳で拾うと全体の構造がつかみやすい。そのうえでアコーディオンのフレーズが同じパルスに対してどれだけ「走る」かを聴くと、フナナのダンス的な推進力の正体が見えてくる。Bitoriの「Tan Kalakatan」(1997)は録音状態もクリアで、二つの楽器の絡み合いを観察するのに適している。歌詞のクレオール語は独特のアクセントパターンを持ち、ポルトガル語話者でも別言語に聞こえるほど変化している。

発展

1980年代にフィナソンとビトリ・ヌ・ビビンナが電化フナナを完成させ、続くフェレル・ブラスやテルカフェがリスボン経由で欧州市場に発信。今日ではモルナと並ぶ国民音楽として、独立祝典の中心ジャンルである。

出来事

  • 1975: カーボベルデ独立、フナナ解禁
  • 1981: ビトリ・ヌ・ビビンナ結成
  • 1986: フィナソン結成
  • 2000s: リスボン経由で欧州ワールドミュージック市場に流通

派生・影響

モルナ、コラデイラ、バトゥケと相互影響し、アンゴラ・キゾンバや欧州クラブ音楽にも交差。

音楽的特徴

楽器ガイタ、フェロ、エレキギター、ベース、ドラム

リズム高速2/4、急スクレーパー、独立後の電化

代表アーティスト

  • Bitoriカーボベルデ · 1981年〜2024
  • Mayra Andradeカーボベルデ · 2006年〜

代表曲

日本との関係

カーボベルデ音楽全般のなかではCésaria Évoraのモルナ(morna)が日本でも一定の知名度を持つが、フナナは現時点でほとんど紹介されていない。ワールドミュージック専門の輸入盤レコード店やフェスで取り上げられることはほぼなく、Mayra AndradeのJazz寄りのアルバムを通じてカーボベルデに興味を持ったリスナーがフナナへたどり着くケースが一部に見られる程度だ。

初めて聴くなら

Bitorの「Tan Kalakatan」(1997)でジャンルの骨格を確かめ、続けてMayra Andradeの「Stória, Stória...」(2009)でより洗練されたアレンジを聴いてみるといい。前者は伝統的な2楽器編成に近く、後者は現代的なプロダクションが加わっているが、根底のリズムの感触は共通している。

豆知識

植民地時代、フナナは「バジェラ(baixa、低い)の音楽」として農民や奴隷の末裔と結びつけられ、中産階級のカーボベルデ人からも距離を置かれていた時期があった。独立後に政府が文化振興の一環として掘り起こしたことで、皮肉にも国民音楽の象徴として地位が逆転した。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1850年代1930年代フナナフナナモルナモルナ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
フナナを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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