フナナ
カーボベルデ・サンチャゴ島の農村で生まれ、独立後に解禁・電化された、アコーディオンと鉄棒で駆動するアフロ・カリブ的なダンス音楽。
どんな音か
ガボン(蛇腹楽器)と呼ばれるダイアトニック・アコーディオンが高速で駆動する。アコーディオンが右手で速いフレーズを刻みながら左手でリズムを叩き出す一方、フェロ(ferro)と呼ばれる鉄の棒——刃物や包丁の背面を別の金属で擦る打楽器——が一定のパルスを刻む。テンポは速め(120〜150BPM)で、二つの音の組み合わせだけでフロアを動かす設計になっている。歌は単純なコールアンドレスポンスが多く、クレオール語(カーボベルデ固有のポルトガル語系クレオール)の歌詞は農村の日常や恋愛、植民地支配への皮肉を混ぜて歌う。Bitori(Victor Tavares)の演奏では、アコーディオンのベロシティが随所で急変し、聴いている側の体が自然に揺れるような引力がある。
生まれた背景
聴きどころ
発展
1980年代にフィナソンとビトリ・ヌ・ビビンナが電化フナナを完成させ、続くフェレル・ブラスやテルカフェがリスボン経由で欧州市場に発信。今日ではモルナと並ぶ国民音楽として、独立祝典の中心ジャンルである。
出来事
- 1975: カーボベルデ独立、フナナ解禁
- 1981: ビトリ・ヌ・ビビンナ結成
- 1986: フィナソン結成
- 2000s: リスボン経由で欧州ワールドミュージック市場に流通
派生・影響
モルナ、コラデイラ、バトゥケと相互影響し、アンゴラ・キゾンバや欧州クラブ音楽にも交差。
音楽的特徴
楽器ガイタ、フェロ、エレキギター、ベース、ドラム
リズム高速2/4、急スクレーパー、独立後の電化
代表アーティスト
- Bitori
- Mayra Andrade
代表曲
- Stória, Stória... — Mayra Andrade (2009)
- Tunuka — Mayra Andrade (2013)
Tan Kalakatan — Bitori (1997)
Legenda — Bitori (2016)
Dinha Pelegrina — Bitori (2017)
日本との関係
初めて聴くなら
Bitorの「Tan Kalakatan」(1997)でジャンルの骨格を確かめ、続けてMayra Andradeの「Stória, Stória...」(2009)でより洗練されたアレンジを聴いてみるといい。前者は伝統的な2楽器編成に近く、後者は現代的なプロダクションが加わっているが、根底のリズムの感触は共通している。
豆知識
植民地時代、フナナは「バジェラ(baixa、低い)の音楽」として農民や奴隷の末裔と結びつけられ、中産階級のカーボベルデ人からも距離を置かれていた時期があった。独立後に政府が文化振興の一環として掘り起こしたことで、皮肉にも国民音楽の象徴として地位が逆転した。
