伝統・民族

メント

Mento

ジャマイカ / カリブ海 · 1900年〜

20世紀前半ジャマイカで成立した、アコースティック編成の田舎的アフロ・カリブ歌謡で、レゲエに先立つジャマイカ・ポピュラー音楽の祖。

どんな音か

メントはアコースティック編成が基本で、ギター、バンジョー(またはルーマニア式コード・バンジョー)、ルンバ・ボックス(大型の親指ピアノ、低音ベース担当)、ハンドドラム、ガラガラが揃う。テンポは中程度の2拍子系で、リズムはシンコペーション(弱拍への強調)が多く、体が自然に揺れる。歌詞は英語とジャマイカ・クレオール語が混ざり、愛、食べ物、性的な比喩、地域の噂話などがテーマ。Lord Flea「Naughty Little Flea」(1957)のタイトル通り、言葉遊びと意味の二重性がメント特有のユーモアを作る。録音は1950年代の古いモノラルが多く、音がこもっているが、その音質自体が時代の空気を運ぶ。

生まれた背景

メントは20世紀初頭のジャマイカ農村部で、アフリカ起源のリズムとカリブのヨーロッパ系音楽(コンティーリョン、ポルカ)が混ざって成立した。ジャマイカ各地で行われた「バーンヤード・ダンス」の音楽がメントの前身とされる。1950年代に入るとブルーマウンテン・コーヒーを売るバー文化とともに観光客向けにも演奏されるようになり、Lord Fleaのような演奏者がアメリカ合衆国のレコード会社と契約した。スカ(1960年代)、ロックステディレゲエへの直接の先祖として位置づけられる。

聴きどころ

Lord Flea「Naughty Little Flea」(1957)のルンバ・ボックスの低音に注目してほしい。親指で弾く金属の舌が規則的に鳴り、ベースラインを担う。コントラバスのような重さはないが、楽曲の底を安定させる独特の存在感がある。バンジョーの刻みはリズムの裏拍を強調し、前のめりの推進力を作る。The Jolly Boys「Take Her to Jamaica」(1989)は現代録音で音がクリアなため、各楽器を分離して聴きやすい。

発展

1960年スカの台頭で商業的に後景化したが、ザ・ジョリー・ボーイズ、ナバン・キャレイバンらが伝統を保持。1990年代以降のジャマイカ国民文化遺産政策で再評価された。

出来事

  • 1949: ジャマイカ初の商業録音
  • 1955: ハリー・ベラフォンテのカリプソ・ブームでメントも国際紹介
  • 1960: スカ台頭で後景化
  • 1996: ザ・ジョリー・ボーイズ復活

派生・影響

スカ、ロックステディ、レゲエ、カリプソと相互影響。

音楽的特徴

楽器アコースティックギター、バンジョー、ルンバ・ボックス、マラカ、声

リズム緩やかな2/4、後拍弱拍、諧謔歌詞

代表アーティスト

  • Lord Fleaジャマイカ · 1953年〜1959
  • Jolly Boysジャマイカ · 1955年〜
  • The Jolly Boysジャマイカ · 1955年〜

代表曲

日本との関係

レゲエ日本に多くのファンを持つが、その先祖であるメントを知る日本人リスナーはほとんどいない。ジャマイカ音楽の歴史を追う愛好家が記録として聴くことはあっても、メントを独立したジャンルとして楽しむ文化は国内では形成されていない。

初めて聴くなら

The Jolly Boys「Touch Me Tomato」(1989)は音質が良く、ルンバ・ボックス、バンジョー、ハンドドラムの組み合わせが明確に聴き取れる。歌詞の意味を調べると、食べ物の比喩が性的な意味を持つメントの言葉遊びの典型例になっている。

豆知識

メントが「レゲエの源流」として語られるようになったのは比較的最近のことで、1960〜70年代はスカレゲエの陰に隠れて忘れられていた。The Jolly Boys はメント復興の旗手として1980年代末から再び注目を集め、2010年には「レゲエ got soul」という現代のポップソングをメントアレンジでカバーしたアルバムを出した。ルンバ・ボックスはアフリカのンビラ(親指ピアノ)を大型化したもので、カリブ各地にそれぞれのバリエーションが存在する。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1900年代1950年代メントメントスカスカ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
メントを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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