伝統・民族

小唄

Kouta

江戸(東京) / 日本 / 東アジア · 1855年〜

別名: Edo Kouta

幕末期(1850年代)に成立した日本の小型三味線歌曲で、爪弾き奏法を特徴とする極小形式の古典邦楽。

どんな音か

小唄の音は、気密性の高い茶室での音色である。三味線は通常の三味線よりも一回り小型で、撥ではなく爪で弾かれる。音量はか弱く、BPMも遅く(60〜80)、1曲が2〜4分程度に集約される。爪弾きのため、音の『粒立ち』が明確で、各音が透明感を持つ。歌唱は比較的高い音域の男性テナーが主で、詩情的で抒情的。歌詞は恋愛や季節の情感を詰め込み、非常に濃密である。背景に『間』(沈黙)が多くあり、全体として『虚の美学』が支配的。

生まれた背景

小唄は江戸末期(1855年頃)に成立し、それまでの『俗謡』から『古典音楽』への昇華を遂行した。幕末の遊郭文化や知識人のサロン文化の中で洗練され、特に春日とよ(かすが・とよ)などの高名な歌手によって芸術的水準が高められた。戦前日本では『最も純粋な日本古典音楽』として扱われ、女性教養の必須科目とされることもあった。戦後、邦楽全体の衰退に伴い、小唄も限定的な継承に留まっている。

聴きどころ

爪弾きの『粒立ち感』と、音が消えていく『残響感』。歌唱の『鼻腔を利用した音色』(邦楽特有の技法)。三味線と歌唱の『微妙なズレ』(完全には同期しない関係)。1曲の『短さ』がもたらす『凝縮感』。

発展

明治末から大正期に春日とよらの春日派、田村派などの流派が成立した。昭和期には小唄勝太郎ら歌手の登場で大衆化し、ラジオ歌謡にも取り入れられた。現代も小唄協会傘下で継承される。

出来事

  • 1855年頃: 小唄様式の創始。
  • 1906年: 春日とよが春日派創流。
  • 1931年: 小唄勝太郎『島の娘』ヒット。
  • 1954年: 小唄協会発足。
  • 2000年代: 邦楽鑑賞コンサートで定番化。

派生・影響

演歌・歌謡曲の小節技法に部分的に受け継がれ、芸者文化の存続とともに継承される。

音楽的特徴

楽器細棹三味線(爪弾き)、声

リズム極めて短い詞章、爪弾き伴奏、含み笑いの節回し

代表アーティスト

  • 春日とよ日本 · 1900年〜1962

日本との関係

小唄日本の古典邦楽教育の中では重要な地位を持つが、一般的な認知度は低い。邦楽学習者や民族音楽愛好者の間ではよく知られており、特に関西の上層階級では嗜み文化として存続している。

初めて聴くなら

春日とよが演奏する小唄。最初の入門としては、比較的著名な演目よりも、春日とよの『肉声録音』(おそらく1950年代の放送音源)を推奨する。夜間に、静寂の中で聴くと、江戸末期の茶室の空気が蘇る。

豆知識

春日とよは19世紀後半から20世紀初頭の小唄の最高の歌手で、彼女の『音響的な選択』(どのフレーズを高く歌い、どこで低くするか)が小唄の『美学』を事実上決定した。小唄と三味線の『完全な同期を避ける』という奏法は、わざと『ズレ』を作ることで『情緒的な深さ』を表現するという美学に基づいている。戦前の日本では小唄を習うことが『女性の修養』を示す指標とされ、家族計画映画などでも登場する。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1830年代1850年代小唄小唄端唄端唄凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
小唄を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

日本 · 1855年前後 (±25年)

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