小唄
幕末期(1850年代)に成立した日本の小型三味線歌曲で、爪弾き奏法を特徴とする極小形式の古典邦楽。
どんな音か
小唄の音は、気密性の高い茶室での音色である。三味線は通常の三味線よりも一回り小型で、撥ではなく爪で弾かれる。音量はか弱く、BPMも遅く(60〜80)、1曲が2〜4分程度に集約される。爪弾きのため、音の『粒立ち』が明確で、各音が透明感を持つ。歌唱は比較的高い音域の男性テナーが主で、詩情的で抒情的。歌詞は恋愛や季節の情感を詰め込み、非常に濃密である。背景に『間』(沈黙)が多くあり、全体として『虚の美学』が支配的。
生まれた背景
聴きどころ
爪弾きの『粒立ち感』と、音が消えていく『残響感』。歌唱の『鼻腔を利用した音色』(邦楽特有の技法)。三味線と歌唱の『微妙なズレ』(完全には同期しない関係)。1曲の『短さ』がもたらす『凝縮感』。
発展
明治末から大正期に春日とよらの春日派、田村派などの流派が成立した。昭和期には小唄勝太郎ら歌手の登場で大衆化し、ラジオ歌謡にも取り入れられた。現代も小唄協会傘下で継承される。
出来事
- 1855年頃: 小唄様式の創始。
- 1906年: 春日とよが春日派創流。
- 1931年: 小唄勝太郎『島の娘』ヒット。
- 1954年: 小唄協会発足。
- 2000年代: 邦楽鑑賞コンサートで定番化。
派生・影響
演歌・歌謡曲の小節技法に部分的に受け継がれ、芸者文化の存続とともに継承される。
音楽的特徴
楽器細棹三味線(爪弾き)、声
リズム極めて短い詞章、爪弾き伴奏、含み笑いの節回し
代表アーティスト
- 春日とよ
日本との関係
初めて聴くなら
春日とよが演奏する小唄。最初の入門としては、比較的著名な演目よりも、春日とよの『肉声録音』(おそらく1950年代の放送音源)を推奨する。夜間に、静寂の中で聴くと、江戸末期の茶室の空気が蘇る。
