古典

黄梅戯

Huangmei Opera

安徽省安慶 / 中国 / 東アジア · 1850年〜

別名: Anhui Opera

安徽省安慶を中心とする、明朗で叙情的な地方戯曲。

どんな音か

黄梅戯(ホワンメイシー)の声はやわらかい。北京京劇の甲高い発声や豫劇の力強い張り方とは対照的に、地声の自然な音域で語るように歌うスタイルで、方言(安慶語)のなだらかなアクセントが旋律に直接反映される。伴奏はニ胡(二胡)と揚琴(ヤンチン、ハンマーダルシマー)が中心で、比較的穏やかな音量で歌声を支える。物語は民間説話や恋愛譚が多く、農村の素朴な情景を舞台にした演目が多い。厳鳳英の「天仙配」(1955年)は黄梅戯の最もよく知られた演目で、天女と樵の恋物語を描く。

生まれた背景

黄梅戯の名前は安徽省黄梅県(現在の湖北省)の「采茶戯(さいちゃぎ、茶摘み歌)」に由来するとも言われるが、詳細は諸説ある。清代後半から安慶地域の農村で発展し、1950年代に厳鳳英(ヤン・フォンイン)が主演した映画版「天仙配」(1955年)が全国で公開されてから一躍有名になった。この映画の成功で黄梅戯は安徽省の代表的地方劇として確立し、国営映画撮影所が続けてシリーズ化した。2000年代以降はテレビドラマに演目を組み込む形で若い世代にも届いている。

聴きどころ

厳鳳英の「天仙配」は歌の旋律がそのまま物語の感情と連動していて、音楽的な知識がなくてもシーンの喜怒哀楽が声から伝わりやすい。ニ胡の旋律が歌の前後を埋め、歌い終わりの余韻を引き受ける箇所に注目すると、伴奏と声の分担関係が見えてくる。

発展

1953年に厳鳳英・王少舫らが安徽省黄梅戯劇団を結成し、映画『天仙配』(1955年)が大成功を収めた。改革開放後は馬蘭ら新世代が継承し、テレビドラマ化も進んだ。シンプルな旋律と物語性で大衆人気が高い。

出来事

  • 1850年頃: 湖北採茶戯から黄梅戯派生。
  • 1953年: 安徽省黄梅戯劇団結成。
  • 1955年: 映画『天仙配』公開。
  • 1959年: 映画『女駙馬』。
  • 2006年: 国家級無形文化遺産指定。

派生・影響

安徽・湖北・江蘇・台湾の華語劇に影響し、中国農村題材の現代演劇・映画にも素材を提供した。

音楽的特徴

楽器高胡、二胡、揚琴、笛、嗩吶、板鼓、声

リズム平詞・花腔の二大声腔、明朗な旋律、口語的詞章

代表アーティスト

  • 厳鳳英中国 · 1945年〜1968

代表曲

日本との関係

黄梅戯日本ではほとんど知られておらず、中国音楽・演劇の専門書に登場する程度だ。1955年の映画「天仙配」は中国映画史の文脈で言及されることがあるが、音楽ジャンルとして日本で認知される機会はない。

初めて聴くなら

厳鳳英「天仙配」(1955年)の映画版を映像付きで見るのが最初の体験として最適だ。字幕(英語か日本語)があれば物語の文脈とともに音楽を聴けるので理解が深まる。声の親しみやすさは中国地方劇の中では高いほうで、京劇の高音に馴染めなかった人でも聴きやすい。

豆知識

厳鳳英(1930〜1968年)は文化大革命の迫害のなかで、1968年に若くして亡くなった(享年38歳)。死因については様々な説があり、公式記録と証言の間に食い違いがあって今も完全には明らかになっていない。彼女の死後、黄梅戯の復興は1970年代末の文革終結後まで待たなければならなかった。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1550年代1850年代黄梅戯黄梅戯崑曲崑曲凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
黄梅戯を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

中国 · 1850年前後 (±25年)

  • 伝統・民族二人転1850年〜 · 中国
  • 古典川劇1850年〜 · 中国
  • 古典粵劇1850年〜 · 中国

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