伝統・民族

二人転

Errenzhuan

遼寧・吉林 / 中国 / 東アジア · 1850年〜

別名: 东北二人转 / Northeast China Two-person Show

中国東北地方の、男女二人による歌唱・話芸・舞踊総合芸能。

どんな音か

男女2人(または1人が両役を演じる)が向かい合い、歌と掛け合いの台詞と踊りを組み合わせながら演じる。歌はテンポが速く音域が広く、転調を繰り返し、声は張り上げるよりも「叫ぶ」に近い勢いが特徴だ。演奏は揚琴・二胡・三弦などの弦楽器にトラタ(大型シンバル)が加わり、コメディの「ツッコミ」部分では打楽器がアクセントを入れる。手に持った団扇や絹のハンカチを使う小道具の扱いも演技の見せ場で、動きの大きな振り付けと組み合わさる。方言の言い回しやアドリブが多く、その場の観客に合わせて内容が変わることも多い。

生まれた背景

二人転の原型は19世紀初頭、清代の中国東北(満州)地方の農村で行われていた「秧歌(ヤンガー)」や「蓮花落(リアンファルオ)」などの民間芸能にある。遼寧・吉林・黒竜江の各省にまたがる地域で農民の娯楽として発展し、農閑期の旅芸人が村から村へ渡り歩いた。20世紀に入ると鉄嶺(遼寧省)や四平(吉林省)などで劇団が組織され、1980年代の改革開放後にテレビ放送とカセットで急速に普及した。趙本山(ジャオ・ベンシャン)はその代表的な芸人で、1990年の中央電視台春節聯歓晩会(中国の年末紅白に相当)への出演で全国区の知名度を得た。

聴きどころ

「小拜年」(趙本山、1990)は新年の挨拶をテーマにした明るい演目で、掛け合いのテンポと歌の旋律の速度がどれだけ近いか——境界が消えるような瞬間——に耳を向けると二人転の特徴がつかめる。録音は映像と合わせて観るほうが面白く、身体の動きとリズムの関係が一目でわかる。

発展

1990年代から趙本山が二人転を全国区の人気芸に押し上げ、東北の劉老根大舞台などの定常興行が成功した。CCTV春節晩会の常連となり、商業化と批評の両面で議論を呼んでいる。

出来事

  • 1850年頃: 秧歌・蓮花落の融合で成立。
  • 1949年: 国営劇団化。
  • 1990年代: 趙本山による全国化。
  • 2003年: 劉老根大舞台開業。
  • 2006年: 国家級無形文化遺産指定。

派生・影響

東北系コメディ・小品劇・趙家班一門芸能を生み、中国農村出身芸能人の登竜門となった。

音楽的特徴

楽器板胡、嗩吶、揚琴、太鼓、鉦、声

リズム秧歌調、男女問答、滑稽即興と舞の組み合わせ

代表アーティスト

  • 趙本山中国 · 1982年〜

代表曲

日本との関係

日本での認知度は非常に低く、中国東北文化の文脈で語られることがほぼない。在日中国人(特に東北出身者)のコミュニティでは郷愁のある娯楽として親しまれているが、日本の一般メディアに登場することはほぼない。ただし趙本山の存在は中国語学習者の間でコメディの参照点として知られることがある。

初めて聴くなら

趙本山の春節晩会の映像をYouTubeで検索して観るのが最初の入口として実用的だ。中国語がわからなくても身体の動きと掛け合いのテンポで笑いのタイミングがわかる。「小拜年」は比較的シンプルな構成で、二人転の骨格が把握しやすい。

豆知識

二人転はかつて「野卑すぎる」として文化的に低く見られていた時代があったが、趙本山の成功によって東北文化の象徴として再評価された。彼は後に独自のテレビ制作会社・劇団を設立し、二人転を専門に上演する「刘老根大舞台」という劇場チェーンを中国全土に展開している。

同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

中国 · 1850年前後 (±25年)

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