崑曲
明代に蘇州崑山で成立した、中国最古の戯曲様式。
どんな音か
崑曲の歌唱は極めて精妙で、一音に数拍かけることが珍しくない。リズムは規則的というより流動的で、台詞と歌の境界が曖昧。楽器は琵琶と笛が主で、歌とかけ合う形で組み込まれる。全体のテンポは遅く、舞台上の一挙一動が見える時間が確保されている。漢文の古典を舞台化しているため、一語一語が意味を持ち、言葉の重みが音に反映している。
生まれた背景
明代の蘇州(崑山地域)で成立した戯曲様式。洗練された文語文を使い、社会的地位の高い読み書きできる階級向けの娯楽として出発した。その後、清代には帝室の好みの対象となり、宮廷内で改変・洗練されさらに優雅になった。民国期以降は上海などの大都市でも上演され、20世紀後半には保護対象の古典として認識されるようになった。
聴きどころ
歌い手の声帯のコントロール、一音がどう開始してどう終わるか。楽器が歌のどの部分で入り、どう退出するか。漢文のリズムと音楽的リズムの食い違いと調和。舞い手の足音が含まれるライブ録音での、音と動きの同期。
発展
清代後期に京劇の興隆で大衆人気は失われたが、文人愛好家による継承が続いた。20世紀には俞振飛・朱伝茗らが伝承を担い、1956年の『十五貫』復活公演で再認識された。2001年のユネスコ無形文化遺産登録が決定打となり、2004年の白先勇プロデュース青春版『牡丹亭』が大学生世代に再ブームをもたらした。
出来事
- 1561年頃: 魏良輔の崑山腔改良。
- 1598年: 湯顕祖『牡丹亭』。
- 1956年: 復活公演『十五貫』。
- 2001年: ユネスコ「人類の口承及び無形遺産の傑作」第一陣として宣言。
- 2004年: 白先勇青春版『牡丹亭』初演。
派生・影響
京劇・川劇・湘劇・贛劇など中国全土の地方戯曲の祖であり、中国伝統舞台美学の基礎を提供した。
音楽的特徴
楽器曲笛、笙、簫、琵琶、三弦、月琴、板鼓、声
リズム曲牌体、典雅で緩慢な旋律、四声に厳格に従う詞章
代表アーティスト
- 俞振飛
- 張継青
代表曲
牡丹亭・遊園驚夢 — 張継青 (1982)
日本との関係
初めて聴くなら
『牡丹亭・遊園驚夢』張継青(1982年)。牡丹亭は崑曲の代表作で、特に遊園驚夢の場面は音楽的ハイライト。できれば映像版を見ることで、音楽と舞踊・衣装の総合芸術性が理解できる。
