伝統・民族

ルーノ歌唱

Finnish Runic Singing

フィンランド / 北欧 · 500年〜

別名: Runolaulu / Kalevala Singing

カレワラ詩律のフィンランド古詩歌唱。

どんな音か

フィンランドの古詩『カレワラ』の韻律に沿った単音旋律。テンポは遅く、各フレーズは『対で』進行する(A-B-A-B という形式)。音域は狭く、同じ音程で何度も反復し、その反復のなかで言葉の『意味の層』が立ち現れる。伴奏は最小限で、ヤンリパ(フィンランド伝統弦楽器)か無伴奏かのいずれか。声質は『息づかい』をあらわにし、古びた木造の空間を想定した音量設定。

生まれた背景

カレワラ詩は、19世紀の民族音楽学者エリアス・ロンロットが、フィンランド東部・カレリア地方の村々を訪ね、高齢の女性歌い手から採集・編纂したもの。当時のフィンランドロシア帝国の支配下にあり、この『民族の詩』の発見は、ナショナル・アイデンティティの形成に貢献した。20世紀の民族音楽グループVärttinäは、このカレワラ詩を現代の声楽技法で復活させた最初の世代。

聴きどころ

カレワラ詩の『対句構造』が旋律にも反映されており、各フレーズが『上下の振動』を繰り返す。その『振動』そのものが、古代フィンランド人の『世界観の周期性』を表現している。また、言葉と声の『時間的距離』を意識すると、『古い歌唱法の復活』ではなく『現代による古さの『再解釈』』であることが明白になる。

発展

1835年『カレワラ』刊行で国民音楽運動の核となる。Sibeliusら作曲家が題材として採用。21世紀にはVärttinäら現代女性ヴォーカル団が再解釈する。

出来事

  • 1835: 『カレワラ』初版
  • 1849: 増補版刊行
  • 1893: Sibelius『クッレルヴォ』
  • 1983: Värttinä結成

派生・影響

フィンランド古典音楽、Nordic Folkメタルの精神的基盤。

音楽的特徴

楽器カンテレ(5弦)、声

リズム5音節トロカイック、5/4または同時拍

代表アーティスト

  • Värttinäフィンランド · 1983年〜

代表曲

日本との関係

フィンランド音楽は、1970~1980年代のプログレッシブ・ロック流行時に、『北欧の秘境音楽』として言及されたことがある。また、Linkin Parkなどメタルコア系バンドが北欧民俗音楽を採用する流行も起きた。ただし、カレワラ古詩唱そのものの認知度は、きわめて低い。2000年代以降のJ-POPアーティストによる北欧民俗音楽への関心の高まりも、ルーノ歌唱までは及んでいない。

初めて聴くなら

Värttinäの『Aitara』(1991)。古詩を現代的な声楽アレンジで唱えたもので、『歴史の断裂と継続』の両者を同時に体験できる。冬の夜間、暖房を控えた寒い部屋で聴くことで、歌唱のテクスチャーが一層深まる。

豆知識

カレワラ詩は、19世紀の『民族音楽採集運動』という西欧的な学問的フレームワークによって『発見』されたもの。つまり、フィンランド人自身はそれまで『古い詩集』という感覚を持っていなかった。言語学と民族主義が交わり、『ジャンル化』が初めて起こった。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図0年代500年代1350年代ルーノ歌唱ルーノ歌唱ヨイクヨイクリームルリームル凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ルーノ歌唱を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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