伝統・民族

リームル

Icelandic Rímur

アイスランド / 北欧 · 1350年〜

アイスランドの叙事詩朗唱。

どんな音か

リームル(rímur、単数形ríma)は叙事詩を特定の旋律型(ウィス、vísur)に乗せて一人で朗唱する形式だ。楽器は使わない。声はファルセットではなく、ただ旋律に乗せて歌う——しかし「歌」よりは「語り」に近い感覚で、言葉の音節数と旋律の音数が厳密に対応する。アイスランド語の硬い子音の響きが連続し、頭韻(同じ音で始まる言葉が連続する詩の技法)が聴覚的なパターンを作る。Steindór Andersenは現代のリームル演奏者として最も知られており、「Ólafs ríma Grænlendings」(1996)はSigur Rósのメンバーとの共演盤に収録された録音で、伝統的な詠唱と現代的なドローン音楽が組み合わさっている。

生まれた背景

リームルは中世アイスランドで発展し、14世紀から記録が残る。サガ(散文の英雄譚)の物語を韻文に変換する形式で、北欧神話・ロマンス文学・農村の娯楽として機能した。印刷技術が普及する前、リームルは冬の夜長に集まった人々が聴く娯楽だった——暖炉の傍で一人が詠唱し、他の人々は手仕事をしながら聴いた。電気もラジオもない時代のアイスランドの娯楽として、16〜19世紀に膨大な数の詠唱作品が生み出された。20世紀に入って録音・放送技術が普及すると衰退したが、1970〜80年代の民俗復興運動で再評価されている。

聴きどころ

Steindór Andersenのリームルは最初、旋律のパターンを追うのが難しいかもしれない。ポイントは「繰り返す旋律型(ウィス)」で、同じメロディ輪郭が異なる歌詞に繰り返し現れる——この反復構造が見えてくると、アイスランド語が分からなくても音楽の骨格が感じ取れる。「Ólafs ríma」でSigur Rósのドローンが加わる版を聴くと、伝統的な詠唱が現代の音楽語法とどう響き合うかが分かる。

発展

1929年Iðunn協会設立で記録・保存が進む。Sigur RósやÁrstíðirら現代音楽家が引用し再評価された。Steindór Andersenら継承奏者の録音が残る。

出来事

  • 1390s: Ólafs rímur Tryggvasonar成立
  • 1929: Iðunn協会設立
  • 1996: Steindór Andersen記録音源
  • 2002: Sigur Rós ámkvæðiコラボ

派生・影響

アイスランド現代Indie Folkの題材源。

音楽的特徴

楽器声(無伴奏)、ランゲライク類似弦

リズム頭韻・脚韻の厳格な韻律、自由拍朗唱

代表アーティスト

  • Steindór Andersenアイスランド · 1990年〜

代表曲

日本との関係

Sigur Rósが2000年代に日本でも人気を得たことで、アイスランド音楽への関心が高まった時期があった。Steindór AndersenがSigur Rósと共演した録音はその文脈で一部のリスナーに届いているが、「リームル」という形式として認識されていることはほぼない。

初めて聴くなら

Steindór Andersenの「Ólafs ríma Grænlendings」(1996)を、Sigur Rósとの共演盤(『Hvarf/Heim』関連音源)で聴いてみるのが入口として最もとっかかりやすい。アイスランドの孤立した地理と長い冬夜のイメージを頭に置いて聴くと、リームルという形式が生まれた文脈が感じ取れる。

豆知識

リームルの韻律は非常に複雑で、アイスランドの詩学では「ヘップンヘント(hepphent)」「フルヘント(hrynhent)」など数十種類の韻律型が使われてきた。作詩家(リームナスミズル、rímnasmíður)は韻律の厳格なルールを守りながら何千行もの詩を作る技術を競い、現在もアイスランドではリームル作詩のコンテストが開催されている。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図500年代1350年代リームルリームルルーノ歌唱ルーノ歌唱凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
リームルを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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