伝統・民族

クロンチョン

Kroncong

ジャカルタ・スラカルタ / インドネシア / 東南アジア · 1880年〜

インドネシアのポルトガル系を起源とする弦楽ポピュラー音楽。

どんな音か

ゆったりとした3拍子か4拍子のリズムで、チュック(小型ギター)とチュケル(バンジョーに近い弦楽器)が裏拍にブリブリとした音を刻む。フルートまたはヴァイオリンが旋律を担い、コントラバスが低音を支える。ボーカルは艶があって、息多め。音全体が穏やかで、夜の風通しのよい場所で鳴っているような感触がある。「ベンガワン・ソロ」のような曲は旋律がゆっくりと上昇し、下降する。

生まれた背景

ポルトガルの船乗りが16世紀にジャワに持ち込んだギターと合奏習慣が、ジャワの旋律と融合した。クロンチョという名称は「チュック・チュック」という弦の音の擬音が由来という説がある。19世紀末から20世紀初頭に現在の編成が固まり、オランダ植民地期に「インディッシュ(インドネシアオランダ混合)」文化の一部として発展した。ゲサン・マルトハルトノの「ベンガワン・ソロ」(1940年)は川(ソロ川)への郷愁を歌い、第二次世界大戦中に日本軍兵士にも歌われた。

聴きどころ

チュックとチュケルの裏拍の弾き方が、クロンチョのリズムグルーヴの中心だ。通常のギターとは違う、軽く乾いた音が一定のパターンで刻まれる。フルートの旋律は装飾が少なくシンプルで、旋律だけを追えば全体の流れがつかめる。

発展

1930年代にゲサン・マルトハルトノ・ワルジャ・ピマンら作曲家・歌手が大衆化し、独立運動期(1945年)には『ブンガワン・ソロ』が国民的愛唱歌となった。1950〜60年代に黄金期を迎え、現在もスラカルタ・ジョグジャカルタを中心に愛好家コミュニティが活発。

出来事

  • 16世紀: ポルトガル植民地での起源。
  • 1934年: ゲサン『ブンガワン・ソロ』作曲。
  • 1945年: 独立運動の象徴歌として広まる。
  • 1979年: 第1回全国クロンチョン大会。
  • 2010年代: 若手によるクロンチョン現代化運動。

派生・影響

現代インドネシア・ポップ(ポップ・クロンチョン)、マレーシア・ガンブス系音楽との連続性、ファド(ポルトガル)との比較研究の対象。

音楽的特徴

楽器クロンチョン(ウクレレ系)、ヴァイオリン、チェロ、フルート、ベース、声

リズムポルトガル系メロディ、ベース・チェロの規則的拍、マレー語抒情歌詞

代表アーティスト

  • ゲサン・マルトハルトノインドネシア · 1934年〜2010

代表曲

  • Bengawan Soloゲサン・マルトハルトノ (1940)

日本との関係

「ベンガワン・ソロ」は日本語歌詞(「懐かしのソロ河」など)で歌われ、戦中世代の日本人に親しまれた曲だ。インドネシア占領期に日本兵がこの曲を覚えて帰国し、日本で広まったという経緯がある。現在では知名度が下がっているが、戦後の大衆音楽史の文脈で言及されることがある。

初めて聴くなら

ゲサン・マルトハルトノの「ベンガワン・ソロ」(1940年)を夜に聴く。夕方か夜、音量を絞ったラジオで聴くような距離感が合っている。

豆知識

「ベンガワン・ソロ」はアジアで最も広く知られたインドネシア曲のひとつで、マレー語・日本語・タイ語など多くの言語でカバーされている。作曲したゲサンは1917年生まれで、2010年に93歳で亡くなった。インドネシア政府は彼を国民的英雄として表彰している。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1820年代1880年代クロンチョンクロンチョンファドファド凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
クロンチョンを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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