ドゥーマー・ウェイヴ
2010年代後半YouTubeミーム文化から派生した、孤独・絶望志向のローファイなアンビエント/ポストパンク再構成。
どんな音か
ドゥーマー・ウェイヴの音は暗く、ドライで、冷たい。ポストパンク・リヴァイヴァルのギター(硬くリヴァーブがかかっている)とシンセベースが、遅すぎず速すぎない一定のテンポで刻む。ヴォーカルは感情を押し込んだような低くモノトーンな声で、ロシア語やウクライナ語で歌われることが多い。Molchat Domaのサウンドはベラルーシのミンスク発で、Joy Divisionや初期のThe Cure的な音像を社会主義時代の建築の閉塞感と重ねたような音楽だ。曲全体を通じて音量が大きく変わらず、感情的なカタルシスより「感情の封印」が続く。2010年代後半のYouTubeで「ドゥーマー・ボーイ」というインターネット・ミームと共に広まり、音楽とキャラクターが一体化して消費された。
生まれた背景
ドゥーマー・ウェイヴという名称は、2018年前後のRedditとYouTubeから登場した。「ドゥーマー」とは、気候変動・経済格差・社会的孤立などに対して将来への希望を失った若者像を指すインターネット・ミームで、そのキャラクターに対応する音楽として選ばれたのがMolchat Domaのような旧ソ連ポストパンク系バンドの音楽だった。Molchat Doma(ベラルーシ語で「家々は黙って語る」)は2017年にミンスクで結成し、当初は東欧の小規模インディー・シーンで活動していたが、2019年に『Судно』(スドノ)がYouTubeで爆発的に広まってから国際的な認知度を急上昇させた。
聴きどころ
発展
Molchat Doma『С крыш наших домов』(2017)がTikTokでバイラル化、ジャンルの代表作となった。
出来事
- 2017: Molchat Doma『С крыш наших домов』 / 2019: TikTokでバイラル
派生・影響
Post-punk、Cold Wave、Russian Doomer、Synth-pop。
音楽的特徴
楽器ギター、ベース、ドラムマシン、シンセ、声
リズム中速、ポストパンク・グルーヴ、暗いシンセ
代表アーティスト
- Molchat Doma
代表曲
- Sudno — Molchat Doma (2018)
- Судно — Molchat Doma (2018)
Tantsevat — Molchat Doma (2017)
Ya Ne Komunist — Molchat Doma (2017)
Klinki — Molchat Doma (2018)
日本との関係
ヴェイパーウェイヴやシティポップのネット文化と隣接した形で、日本のインターネット音楽コミュニティの一部でも言及される。ローファイ・チルなどのプレイリスト文化でMolchat Domaが混入している場合もある。ただし「ドゥーマー・ウェイヴ」という名称が日本語で整理されて紹介されたことは少なく、バンド名で知っているがジャンル名は知らないという聴き手が多い。
初めて聴くなら
Molchat Domaの『Судно』(2018年)から。夜、部屋の照明を落として一人で聴くことを想定した音楽で、耳に集中する環境のほうが音楽の設計が伝わる。続けて『Tantsevat』(2017年)を聴くと、同じグループがよりダンス寄りのテンポでどう変わるかが対比できる。
