革命模範劇
文化大革命期に上演を許された8つの革命「模範劇」。
どんな音か
京劇の甲高い唱法・見得・打楽器を土台に、西洋オーケストラを大胆に重ねた革命主題の舞台芸術。労働者・農民・兵士を英雄として描き、伴奏には交響楽的な厚みとバレエ的な振付が加わる。伝統京劇とも西洋オペラとも違う、はっきり聞き分けられる独特の様式を持つ。
生まれた背景
1960年代、毛沢東夫人の江青が主導し、伝統的な才子佳人ものに代えて革命主題の「模範」舞台を作らせた。1966年に始まる文化大革命で『紅灯記』『智取威虎山』など八作が公認され、それ以外の旧劇はほぼ上演禁止になった。約10年間、中国の舞台はこの数作にほぼ独占された。
聴きどころ
京劇の打楽器(鑼や鼓)の鋭いリズムの上に、西洋オーケストラの弦やホルンが乗る瞬間に注目したい。主役が登場するときの英雄的な旋律と、敵役に与えられる不協和で陰険な響きの対比が分かりやすい。京胡の甲高い音色と交響楽の同居が、このジャンル最大の特徴だ。
発展
映画化・レコード化・全国巡演を通じて、模範劇の旋律や台詞は国民の誰もが口ずさめるものになった。1976年の文革終結とともに政治的役割を終えたが、その音楽様式(京劇と交響楽の融合)は後の中国舞台芸術にも痕跡を残した。
出来事
- 1964年: 京劇現代戯の全国会演で革命主題の新作が披露される。
- 1966年: 文化大革命開始、八つの「様板戯」が公認される。
- 1976年: 文化大革命終結とともに様板戯独占の時代が終わる。
派生・影響
紅歌と京劇の融合から派生した。京劇と西洋管弦楽を結合する手法は後の新編京劇にも影響した。
音楽的特徴
楽器京劇の声、京胡、月琴、京劇打楽器(鑼・鼓・板)、西洋オーケストラ
リズム京劇の板眼リズム、甲高い唱法、交響楽的伴奏、見得の様式
代表アーティスト
- 童祥苓
- 钱浩梁
- 刘長瑜
代表曲
- 杜鹃山「乱云飞」 (1973)
- 红灯记「穷人的孩子早当家」 — 刘長瑜 (1970)
智取威虎山「迎来春色换人间」 — 童祥苓 (1970)
日本との関係
初めて聴くなら
『智取威虎山』の名唱段「迎来春色换人间」(1970、童祥苓)が分かりやすい入口で、英雄的な唱法と交響楽伴奏の融合がよく聴き取れる。少年少女の役なら『紅灯記』の唱段を。
豆知識
公認された模範劇はわずか八作前後で、しかも全国で繰り返し上演・放送されたため、当時を生きた中国人の多くがその台詞や旋律をいまも諳んじている。「八つの芝居で十億人の十年」と皮肉られた。
