宗教・霊歌

白人霊歌

White Spirituals

アパラチア地方 / アメリカ合衆国 / 北米 · 1780年〜

アメリカ南部白人開拓者の野営集会(キャンプミーティング)で発達した、英語の宗教的民謡で、シェイプノート記法による。

どんな音か

ホワイト・スピリチュアルズの音は、荒野での集団的な宗教的陶酔である。複数の男女が低い音域から高い音域へと分層し、各パートが独立したラインを歌う『パート・シンギング』形式である。テンポはBPM80〜120で、リズムは比較的シンプル。ただし、各パートの『ズレ』と『遅延』が累積し、全体として『揺らぎのある』和音を生む。歌詞はプロテスタント系の宗教的言語で、『救い』『天国』『罪からの解放』などのテーマが主流。音色は土の香りがして、楽器伴奏なしのア・カペラが典型的。

生まれた背景

ホワイト・スピリチュアルズは18世紀後半から19世紀中盤のアメリカ合衆国南部で発達した。フロンティア開拓時代、教会の統制が届かない開放地で、野営集会(キャンプミーティング)が宗教的な『集団陶酔の場』として機能した。そこで、イングランドのメソディスト運動から輸入された『シェイプノート聖歌』(音符の形で音高を示す記譜法)が流行し、民衆が直接に『多声合唱』を体験することになった。南北戦争後、このジャンルは急速に衰えたが、20世紀の『アメリカ合衆国ーナ音楽』復興運動で再評価された。

聴きどころ

各パートの『不完全な同期』。アルトパートがソプラノを『わずかに遅れて』追いかけることで生まれる『重層感』。ソプラノの高さと『裏声』の領域との境界。集団ア・カペラの『呼吸』(フレーズの終末での全員のブレス)。

発展

1800年代初頭にケンタッキー州レヴァイヴァルから広まり、ジョン・ウィリアム・スティーフェル『The Sacred Harp』(1844)に集成された。後期ブルーグラス・ゴスペルやカントリー・ゴスペルへ流れ込み、現代でもフォーク・リヴァイヴァル運動とサクレッド・ハープ歌唱コミュニティで継承される。

出来事

  • 1801: ケンタッキー、ケイン・リッジ・リヴァイヴァル
  • 1816: アナンス・デイヴィソン『Kentucky Harmony』刊行
  • 1844: 『The Sacred Harp』第1版

派生・影響

シェイプ・ノート(サクレッド・ハープ)歌唱、カントリー・ゴスペル、ブルーグラス・ゴスペル、ボブ・ディランら20世紀フォーク・リヴァイヴァルの素材。

音楽的特徴

楽器会衆斉唱、稀にフィドル・バンジョー

リズムモーダル(短調)旋律、フォーク拍節、コーラス反復

代表曲

日本との関係

ホワイト・スピリチュアルズはアメリカ合衆国ーナ音楽愛好者の間では若干の認識があるが、日本の大衆文化ではほぼ無視されている。ただし、ブルースゴスペルの『起源』という学術的フレームワークの中では、時折言及される。

初めて聴くなら

『Wayfaring Stranger』(旅人)。アメリカ合衆国民族音楽の最も有名な曲で、シンプルながら深い瞑想性を持つ。夜間に、焚き火を想像しながら聴くと、開拓時代の精神的孤独と宗教的救済への渇望が伝わる。

豆知識

シェイプノート記譜法は、音高を『三角形・円形・四角形』で視覚的に区別するもので、識字率の低い開拓民でも楽譜が読めるように設計された。この記譜法は現在でも一部のキリスト教コミュニティで使用され、『Sacred Harp Singing』と呼ばれるムーブメントが存在する。ホワイト・スピリチュアルズとアフリカン・アメリカ合衆国ン・スピリチュアルズの『文化的相互作用』は19世紀南部で実際に起こったが、その後の人種隔離によって音楽的に分断された。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1780年代1840年代1920年代白人霊歌白人霊歌サクレッド・ハープサクレッド・ハープカントリー・ゴスペルカントリー・ゴスペル凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
白人霊歌を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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