白人霊歌
アメリカ南部白人開拓者の野営集会(キャンプミーティング)で発達した、英語の宗教的民謡で、シェイプノート記法による。
どんな音か
ホワイト・スピリチュアルズの音は、荒野での集団的な宗教的陶酔である。複数の男女が低い音域から高い音域へと分層し、各パートが独立したラインを歌う『パート・シンギング』形式である。テンポはBPM80〜120で、リズムは比較的シンプル。ただし、各パートの『ズレ』と『遅延』が累積し、全体として『揺らぎのある』和音を生む。歌詞はプロテスタント系の宗教的言語で、『救い』『天国』『罪からの解放』などのテーマが主流。音色は土の香りがして、楽器伴奏なしのア・カペラが典型的。
生まれた背景
聴きどころ
各パートの『不完全な同期』。アルトパートがソプラノを『わずかに遅れて』追いかけることで生まれる『重層感』。ソプラノの高さと『裏声』の領域との境界。集団ア・カペラの『呼吸』(フレーズの終末での全員のブレス)。
発展
1800年代初頭にケンタッキー州レヴァイヴァルから広まり、ジョン・ウィリアム・スティーフェル『The Sacred Harp』(1844)に集成された。後期ブルーグラス・ゴスペルやカントリー・ゴスペルへ流れ込み、現代でもフォーク・リヴァイヴァル運動とサクレッド・ハープ歌唱コミュニティで継承される。
出来事
- 1801: ケンタッキー、ケイン・リッジ・リヴァイヴァル
- 1816: アナンス・デイヴィソン『Kentucky Harmony』刊行
- 1844: 『The Sacred Harp』第1版
派生・影響
シェイプ・ノート(サクレッド・ハープ)歌唱、カントリー・ゴスペル、ブルーグラス・ゴスペル、ボブ・ディランら20世紀フォーク・リヴァイヴァルの素材。
音楽的特徴
楽器会衆斉唱、稀にフィドル・バンジョー
リズムモーダル(短調)旋律、フォーク拍節、コーラス反復
代表曲
- Wayfaring Stranger
日本との関係
初めて聴くなら
『Wayfaring Stranger』(旅人)。アメリカ合衆国民族音楽の最も有名な曲で、シンプルながら深い瞑想性を持つ。夜間に、焚き火を想像しながら聴くと、開拓時代の精神的孤独と宗教的救済への渇望が伝わる。
豆知識
シェイプノート記譜法は、音高を『三角形・円形・四角形』で視覚的に区別するもので、識字率の低い開拓民でも楽譜が読めるように設計された。この記譜法は現在でも一部のキリスト教コミュニティで使用され、『Sacred Harp Singing』と呼ばれるムーブメントが存在する。ホワイト・スピリチュアルズとアフリカン・アメリカ合衆国ン・スピリチュアルズの『文化的相互作用』は19世紀南部で実際に起こったが、その後の人種隔離によって音楽的に分断された。
