宗教・霊歌

サクレッド・ハープ

Sacred Harp / Shape-note Singing

ジョージア州・アラバマ州 / アメリカ合衆国 / 北米 · 1844年〜

別名: Shape-note / Fasola

形音符(シェイプ・ノート)で記譜される、四声体の参加型讃美歌歌唱伝統。

どんな音か

4声体の無伴奏讃美歌で、各声部(ソプラノ、アルト、テノール、バス)が異なるハーモニー線を保ちながら、同時に全体の和音を作る。形音符(シェイプ・ノート:三角形、四角形、菱形などの異なる音符)により、楽譜が視覚的にわかりやすくなっている。テンポは遅く、各音の長さが明確に指定され、ハーモニーの『ぶつかり』が意図的に作られる場合さえある。讃美歌の歌詞は、主に聖書の内容で、感情的表現よりも『神学的正確さ』が優先される。

生まれた背景

19世紀初頭のアメリカ合衆国南部で、読み書き能力の低い農民にも讃美歌を教える目的で、形音符が発明された。1844年に『The Sacred Harp』という讃美歌集が出版され、その後アメリカ合衆国南部全域に広がった。南北戦争から現在まで、Sacred Harp Singersのコミュニティは、毎年の全国大会を開催し、集団讃歌の伝統を保持している。楽譜の形音符システムは、現在も変わらず、初心者でも参加可能な『民主的な』音楽実践として機能している。

聴きどころ

4つの声部が同時に異なる動きをする複雑さ。特に『Wondrous Love』では、ソプラノが高く舞い上がるとき、ベースは深く沈む。このコントラストが、『崇高さ』の感覚を作る。集団讃歌の場合、複数の歌い手がいても、各声部は個性的なニュアンスを保つ——つまり、完全な一致ではなく『ちょうど良い不完全さ』が美学の中心。

発展

19世紀後半にジョージア・アラバマで独自共同体化し、20世紀初頭は衰退するも、1960-70年代のフォーク・リヴァイヴァルと学術的関心によって再活性化した。現在は全米・英国・欧州・日本にも歌唱集会(シングス)が広がる。映画『コールド・マウンテン』(2003)で世界的注目を集めた。

出来事

  • 1801: ウィリアム・リトル『The Easy Instructor』、四形音符記譜法刊行
  • 1844: B.F.ホワイト&E.J.キング『The Sacred Harp』初版
  • 1991: アラン・ローマックス監修『The Sacred Harp:1959 Recording』再発
  • 2003: 映画『コールド・マウンテン』で再注目

派生・影響

シェイプ・ノート教育法は米国音楽リテラシー普及の基盤となり、20世紀後半のフォーク・リヴァイヴァル・古楽演奏(Tim Eriksen)・現代ミニマル音楽(William Duckworth)にも影響を残した。

音楽的特徴

楽器声(ア・カペラSATB)

リズム形音符記譜、階名先唱、剛直な四声和声、参加型

代表アーティスト

  • Sacred Harp Singers at Libertyアメリカ合衆国 · 1959年〜

代表曲

日本との関係

Sacred Harp の知名度は、日本ではほぼゼロ。アメリカ合衆国南部文化への学術的関心層だけが認識している。讃美歌そのものは、キリスト教系学校や教会で歌われるが、Sacred Harp の『形音符』『集団性』『南部民族性』は、日本の宗教教育には組み込まれていない。

初めて聴くなら

Sacred Harp Singers at Liberty による『Wondrous Love』。150年以上前の歌だが、ボーカルの録音は現代的で明瞭。4声体の関係を感じやすい。続けて『Idumea』で、より複雑なハーモニーを経験する。静かな礼拝堂のような環境で聴くことを勧める。

豆知識

形音符の『fa, sol, la, mi』という音名は、イタリア音名(ド、レ、ミ...)ではなく、古い英語系音名に由来。ソルミゼーション(視唱法)を使うことで、楽譜が読めない人でも讃歌を学べた。現在のSacred Harp大会では、千人を超える讃美歌愛好者が一堂に集まり、4日間にわたって讃歌を歌い続ける。このコミュニティの保存力は、世界的に見ても稀有。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1780年代1840年代サクレッド・ハープサクレッド・ハープ白人霊歌白人霊歌凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
サクレッド・ハープを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

アメリカ合衆国 · 1844年前後 (±25年)

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