伝統・民族
ロンダリャ
Rondalla
フィリピン / 東南アジア · 1700年〜
フィリピンの民族音楽で、スペイン植民地時代に導入されたマンドリン族やルート系の小型撥弦楽器を編成したアンサンブル。
どんな音か
ロンダリャの音は明るく響き渡り、スペインの広場音楽のようなロマンティックな空気がある。バンドゥリア(12弦の楽琵琶)、ラウド(14弦の楽琵琶)、オクティリョ(8弦の小型ギター)、プリモ(マンドリン)が層を成す。各楽器は撥で弦を弾き、速いトレモロ奏法で連続した音の流れが生まれる。全体の音圧は軽く、教会や広場の屋外で演奏されることを想定した音量感。メロディーはスペイン・ロマンス伝統に根ざしながらも、フィリピン民謡の言葉遣いが融合している。
生まれた背景
ロンダリャはスペイン統治下のフィリピン(16世紀〜1898年)で、スペイン本国の楽器がもたらされ、地元の竹材加工技術と結合して発展した。カトリック教会のミサ音楽、公開集会、家庭の音楽として広がり、19世紀には各町ごとにロンダリャ楽団が組織された。独立後も、フィリピンの国民的音楽として学校教育に取り入れられ、現在でも地域フェスティバルの定番として演奏されている。
聴きどころ
バンドゥリアの高音域とラウドの中音域の『クロスフェード』がどう音を動かすか。各楽器のトレモロが一糸乱れず進むテンポ感。和声の動き(特に長調から短調への転調)がどの瞬間に起こるか。
発展
1920〜30年代にホセ・シルベストレ・モンサーラ・コンスタンシオ・デ・ギスマンらが芸術的編曲を行い、戦後は教育音楽として政府が普及を支援した。フィリピン大学・サント・トーマス大学のロンダリャ・グループが世界ツアーを行う。
出来事
- 16世紀: スペイン・トゥナ文化伝来。
- 1920年代: 芸術音楽化。
- 1955年: フィリピン国立ロンダリャ団結成。
- 1986年: 文化センター・ロンダリャ世界公演。
- 2010年代: 学校音楽プログラム拡充。
派生・影響
海外フィリピン人移民の文化アイデンティティ、ラテンアメリカのトゥナ・グループとの比較対象、現代フィリピン・ポップへの素材提供。
音楽的特徴
楽器バンドゥリア、ラウディ、オクタビーナ、バホ・デ・ウーニャス、ギターラ
リズムスペイン系2拍・3拍子、撥弦の細やかな合奏、フィリピン民謡編曲
代表曲
Atin Cu Pung Singsing (1960)
日本との関係
ロンダリャはフィリピン系移民コミュニティを通じて日本にも若干の知識がある。ただ、大衆文化での言及は限定的で、スペイン音楽やラテン音楽の研究者の一部が認識するレベル。
初めて聴くなら
『Atin Cu Pung Singsing』(我らが歌う)。フィリピンの代表的な民族愛国歌で、ロンダリャ・アンサンブルの透明感が最も活きる。夕刻の暖かい時間帯に屋外で聴くと、スペイン・カトリック圏の音楽文化が想像できる。
豆知識
ロンダリャという言葉はスペイン語の『ronda』(巡回、巡行)に由来し、元々は町を巡回して歌う伝統音楽の形式を指していた。バンドゥリアなどの楽器はフィリピンの職人によって地元産に転換され、18世紀にはフィリピン製の楽器がスペインに逆輸入される逆説的な現象も起きた。