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ラテン・カリブ

ランチェラ

Ranchera

メキシコ / 南米 · 1920年〜

20世紀メキシコで成立した、農村牧場(ランチョ)の感情を歌う愛と喪失の歌曲ジャンルで、マリアッチが伴奏する大衆歌の中核。

まずはここから

ひとことで言うと20世紀メキシコで成立した、農村牧場(ランチョ)の感情を歌う愛と喪失の歌曲ジャンルで、マリアッチが伴奏する大衆歌の中核。

まずはこの曲からJosé Alfredo JiménezCamino de Guanajuato ▶ YouTube

代表的な人Pedro Infante

どんな音か

ランチェラは、20世紀メキシコで成立した「農村牧場(rancho、ランチョ)の感情を歌う」大衆歌曲ジャンルで、失恋、酒、故郷への追慕、男気(machismo)を主題にする。伴奏はマリアッチ楽団かギターだけの簡素な形の両方があり、後者は「ランチェラ・トリオ」と呼ばれる。拍子はワルツ系3/4、ポルカ系2/4、そしてボレロ系の緩やかな2/4の三型が中心。歌唱は「グリート」の叫び、感情を絞り出すメリスマ、そして曲の途中で泣きが混じる崩れた発声を許容する——技巧的な正確さより、聴き手を涙ぐませるかどうかがランチェラの品質基準だ。テンポは60-120BPM、コード進行はマイナーとメジャーを行き来する三和音中心のシンプルさが本領で、複雑な和声を避けることで詩そのものが主役になる。

このジャンルを特徴づける代表的なリズムパターン。再生ボタンでループ再生し、下のリズム譜で今どの拍が鳴っているかを確認できます。

ワルツ · 170 BPM

聴きどころ

ホセ・アルフレド・ヒメネス自身の歌唱を聴くと、彼の声質は決して技巧的ではなく、時に音程が揺らぎ、時にしゃがれるのが分かる——それでも彼の楽曲が古典化したのは、詩の力そのものと、素朴な三和音進行が誰でも一緒に歌える普遍性を持ったからだ。ビセンテ・フェルナンデスの『Volver Volver』は、サビで「Volver, volver, volver...(戻る、戻る、戻る)」の三連呼をどこまで長く伸ばせるかで聴衆を沸かせる、まさにランチェラのカタルシスの形式化だ。チャベラ・バルガスの『La Llorona』(1991年録音、彼女72歳時)は、女性が男性の失恋歌を歌い直すことで既存のジェンダー規範を裏返す実践で、ペドロ・アルモドバル監督の映画『花のうた』(1995)、『トーク・トゥ・ハー』(2002)を通じ世界的に再発見された。

初めて聴くなら

最初はビセンテ・フェルナンデスの『Volver Volver』(1972)、ランチェラの型と情動の完成形が5分に詰まっている。次にホセ・アルフレド・ヒメネス自身が歌う『El Rey』(1971)、粗い自作自演の生々しさが聴ける。チャベラ・バルガスの『La Llorona』(1991)は、女性視点でランチェラを歌い直した現代の古典。若い世代でも古典を歌う担い手として、リラ・ダウンズの2010年代の録音群を推薦する。深夜、酒を傍らに、歌詞を追いながらが本来のランチェラの聴き方——「男は泣きながらランチェラを歌うが、女はランチェラを聴きながら生き延びる」というメキシコの俗諺そのままの空気で聴くのがふさわしい。

代表アーティスト

  • Pedro Infanteメキシコ · 1939年〜1957
  • José Alfredo Jiménezメキシコ · 1947年〜1973
  • Chavela Vargasコスタリカ/メキシコ · 1961年〜2012
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  • Vicente Fernándezメキシコ · 1966年〜2021
  • Lila Downsメキシコ/米国 · 1999年〜

代表曲

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生まれた背景

メキシコ革命(1910-20)後の20世紀前半、大量の農民が都市化した労働者としてメキシコシティに流入する中で、「失われた牧場の故郷」を歌う心情の受け皿として、ランチェラは急速に商業音楽となった。決定的な作曲家がホセ・アルフレド・ヒメネス(1926-73、グアナフアト州ドロレス・イダルゴ生)で、彼は音楽的訓練を受けないまま酒場でギターを弾いて歌い、1947年『Yo』でデビュー以降、生涯300曲以上を作曲した。

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『El Rey』『Ella』『Camino de Guanajuato』は現在もメキシコ国民歌として街角のカラオケで歌われている。歌手側の歴史は1930-40年代のロラ・ベルトラン、1960年代のエディ・ゴルメ、そして1961年に初のソロ・アルバムを出した反逆的なチャベラ・バルガス(1919-2012)によって書き換えられた。

音楽的特徴の詳細

楽器マリアッチ、ギター、声

リズムワルツ3/4・ポルカ2/4・ボレロ系、グリート叫び、メリスマ

発展

1950~70年代にホセ・アルフレド・ヒメネスが300曲以上を作曲、メキシコ国民歌の定番となった。21世紀のリラ・ダウンズ、アレハンドロ・フェルナンデスが現代化し、女性パフォーマー(チャベラ・バルガス)による既存ジェンダー規範への異議申し立てもなされた。

出来事

  • 1947: ホセ・アルフレド・ヒメネス作曲家デビュー
  • 1957: ロラ・ベルトラン全盛
  • 1991: チャベラ・バルガス再ブレイク
  • 2014: リラ・ダウンズ・グラミー受賞

派生・影響

マリアッチ、ボレロ、ノルテーニョ、現代メキシコ・ポップ全般に影響。

その後の代表曲

日本との関係

日本でのランチェラの直接的な認知は限定的だが、意外な接点がある。1960-70年代の演歌の勃興期、東京のバー・演歌シーンでラテン音楽(ボレロ、ランチェラタンゴ)が並行して流行し、演歌の作詞家たちがランチェラの「男の哀愁」の詩型を参照した記録が残っている。フランク永井、フランキー堺らはボレロ経由でランチェラの詩情に触れていた。1990年代以降、ペドロ・アルモドバル映画のサントラを通じてチャベラ・バルガスの晩年の歌唱が日本の映画好きに小さく浸透し、単独来日公演も果たしている(2007年、東京)。カンザス・シティのメキシカン移民バンドは日本の一部のラテン・レコード店で入手可能。

豆知識

ホセ・アルフレド・ヒメネスは、生涯を通じて楽譜を書けなかった。彼は自作の曲を口頭で歌い、専門の楽譜担当者に書き取らせていた。

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彼の墓はグアナフアト州ドロレス・イダルゴの故郷にあり、ソンブレロを被った巨大なチャロ像として立っている——現在も年間数十万人が訪れる巡礼地だ。チャベラ・バルガスは公式には1994年、彼女75歳時に自身が長年公然の秘密だった同性愛者であることを認め、以降のキャリア後半は「ランチェラの女性による脱構築」の生きた実例として国際的にも認知された。彼女は2012年、コスタリカで93歳で死去。「私は死んだら、Cielitoの中で泳ぐ」と晩年に語ったことが伝えられる。

影響・派生で結ばれたジャンル

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ジャンル関係図1850年代1920年代ランチェラランチェラマリアッチマリアッチ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ランチェラを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

ランチェラ の系譜全体図(多段)を見る

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