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ポップ

ニャック・ティエンチエン

Nhạc Tiền Chiến

ハノイ / ベトナム / 東南アジア · 1938年〜

別名: 前戦歌謡 / Pre-war music

1930-40年代ベトナムの西洋化された浪漫的歌曲。近代ベトナム歌謡の出発点。

どんな音か

ピアノやギターのやわらかな伴奏に乗せて、独唱者が緩やかなテンポで叙情的に歌う。旋律は西洋の長短調にのっとりながら流麗で、フランスシャンソンの甘く哀しい響きを宿す。歌詞は失われた恋や郷愁、秋や月の情景を、文学的なベトナム語でつづる。

生まれた背景

1930年代後半、フランス植民地下のハノイで、西洋音楽を学んだ若い作曲家たちが「自国語で西洋様式の歌を作ろう」として生まれた。「前戦(ティエンチエン)」とは第一次インドシナ戦争より前の創作を指す後付けの呼び名である。ヴァン・カオやファム・ズイが牽引し、1954年の南北分断まで全土で愛された。

聴きどころ

西洋和声と、ベトナム語の声調が生む独特の旋律の揺れの両立を聴きたい。ピアノやギターの簡素な伴奏に対し、声の表情がいかに豊かかに注目すると、シャンソンとの近さがよく分かる。

発展

ヴァン・カオ、ファム・ズイ、ダン・チュアンらが主要な担い手となり、1954年のジュネーヴ協定による南北分断まで全国的に流行した。分断後は多くの作曲家が南部に移り、後のニャック・ヴァンやニャック・チェの土台となった。

出来事

  • 1938年: ベトナム語西洋様式歌曲の本格的成立(諸説あり)。
  • 1939年: ヴァン・カオ『Buồn Tàn Thu』発表。
  • 1954年: ジュネーヴ協定で南北分断、作曲家の南遷。

派生・影響

ニャック・ヴァン(南部の感傷歌謡)、ニャック・チェ(サイゴンの若者音楽)、近代ベトナム・ポップ全般の母体。

音楽的特徴

楽器ピアノ、ギター、ヴァイオリン、独唱

リズム緩やかなテンポ、西洋長短調和声、シャンソン由来の叙情的旋律

代表アーティスト

  • Văn Caoベトナム · 1939年〜1976
  • Phạm Duyベトナム · 1942年〜2013
  • Đoàn Chuẩnベトナム · 1947年〜2001

代表曲

  • Thiên ThaiVăn Cao (1941)
  • Gửi Gió Cho Mây Ngàn BayĐoàn Chuẩn (1952)
  • Buồn Tàn ThuVăn Cao (1939)

日本との関係

ほぼ同時期に日本でも西洋様式の流行歌・抒情歌が育っており、植民地・近代化の中で西洋音楽を自国語に翻案した点が共通する。古賀メロディーや戦前歌謡を好む日本の聴き手には、その叙情の質が親しみやすい。

初めて聴くなら

ヴァン・カオ『Buồn Tàn Thu』(1939)が初期の名曲で、近代ベトナム歌謡の出発点を体感できる。

豆知識

作曲者ヴァン・カオは、ベトナムの国歌『Tiến Quân Ca(進軍歌)』の作曲者でもある。叙情歌と国歌の両方を書いた稀有な存在だ。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1880年代1930年代1950年代ニャック・ティエンチエンニャック・ティエンチエンシャンソンシャンソンニャック・ヴァンニャック・ヴァン凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ニャック・ティエンチエンを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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ベトナム · 1938年前後 (±25年)