印象主義音楽
1890年代フランスで興った、瞬間的な感覚や色彩を音響で描く音楽様式。ドビュッシーが代表。
どんな音か
印象主義音楽は、輪郭を太く描くより、光、水、風、香りのような一瞬の感覚を和声と音色でにじませる音楽。ドビュッシーではフルートやハープ、弦の弱音が淡く重なり、調性ははっきり帰着せず、色が移るように進む。
生まれた背景
1890年代のフランスで、象徴主義文学や絵画の空気と近い場所から生まれた。ワーグナー的な重い劇性から離れ、旋法、全音音階、東洋風の響き、曖昧な和声を使って、説明ではなく感覚を立ち上げた。
聴きどころ
旋律を口ずさむより、楽器の色が変わる瞬間を聴くとよい。和音が解決しそうでしないところ、低音が曖昧に漂うところ、木管の短いフレーズが風景を照らすところに耳を置く。
発展
ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」(1894)、「夜想曲」(1899)、「海」(1905)、ピアノ作品「映像」「前奏曲集」(1909〜13)が代表作。ラヴェル「水の戯れ」(1901)、「ダフニスとクロエ」(1912)、「ボレロ」(1928)、デュカス、フローラン・シュミット、レスピーギなどが各国で発展に寄与した。
出来事
- 1889: パリ万博、ドビュッシーがガムランに接する
- 1894: ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」初演
- 1902: ドビュッシー「ペレアスとメリザンド」初演
- 1928: ラヴェル「ボレロ」初演
派生・影響
メシアン(ドビュッシーの和声・色彩を発展)、武満徹(透明な響きを継承)、スペクトル楽派(音色そのものへの関心)、20世紀後半の電子音響音楽、映画音楽の色彩的書法に決定的影響を残した。
音楽的特徴
楽器管弦楽、ピアノ、室内楽
リズム教会旋法、全音音階、平行和音、流動的形式
代表アーティスト
- クロード・ドビュッシー
- モーリス・ラヴェル
- オリヴィエ・メシアン
- 武満徹(現代音楽)
代表曲
- 牧神の午後への前奏曲 — クロード・ドビュッシー (1894)
- 海 — クロード・ドビュッシー (1905)
- ダフニスとクロエ — モーリス・ラヴェル (1912)
- ペレアスとメリザンド — クロード・ドビュッシー (1902)
- ボレロ — モーリス・ラヴェル (1928)
日本との関係
初めて聴くなら
入口は「牧神の午後への前奏曲 — クロード・ドビュッシー (1894)」。管弦楽の色彩を広く味わうなら「海 — クロード・ドビュッシー (1905)」、ラヴェルの精密な音の光なら「ダフニスとクロエ — モーリス・ラヴェル (1912)」がよい。
豆知識
印象主義という呼び名は、作曲家本人が好んだ分類とは限らない。特にドビュッシーは単なるぼんやりした音ではなく、響きの配置に非常に鋭い耳を持っていた。絵画の印象派と同じく光や空気を思わせるが、音楽では筆触の代わりに和音の濁り、楽器の重ね方、終止を避ける時間感覚でそれを作っている。 同じフレーズでも楽器を変えるだけで光の向きが変わるため、録音を替えると絵の具の層を見るように印象が変わる。 余白を聴かせる曲でも、実際には楽器配置が緻密で、弱音のバランスが少し変わるだけで海や光の見え方が変わる。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- ポップシャンソン
