ラテン・カリブ

ムルガ・ウルグアヤ

Murga Uruguaya

モンテビデオ / ウルグアイ / 南米 · 1900年〜

ウルグアイ・カーニバルの中核を担う、合唱・諷刺劇・打楽器を組み合わせた仮装合唱劇。

どんな音か

スネアドラム(レドブランテ)、バスドラム(ボンボ)、シンバルの打楽器3点セットが骨格を作り、その上に15〜17人の歌い手たちが合唱を重ねる。声の使い方はオペラでも合唱音楽でもなく、街の広場で拡声器なしに届かせるための張り上げ方に近い。演目は前半の「プレゼンタシオン」(登場・自己紹介)、中盤の「クプレス」(社会や政治への風刺歌)、後半の「サリダ」(退場歌)という構造を持ち、1時間を超えることもある。衣装は原色で、顔には白塗りのメイクがほどこされる。歌と言葉と踊りと笑いが一体化した「劇」だが、楽器は打楽器しか使わない。

生まれた背景

ムルガの直接の先祖は、19世紀末にスペイン(特にカディス地方)から持ち込まれたとされる仮装歌謡の形式だ。モンテビデオのカーニバルの枠組みの中で、移民労働者や黒人コミュニティの文化とまじり合いながら独自の形が生まれた。1900年代初頭には「ムルガ・ウルグアヤ」としての型が固まり、毎年1〜2月のカーニバル期間中に「テアトロ・デ・ベラーノ(野外劇場)」での競演が行われるようになった。軍政期(1973〜85年)には歌詞への検閲が厳しく、Falta y Restoのような団体は政権批判を暗喩として歌詞に込めて歌い続けた。

聴きどころ

Agarrate Catalinaの「Civilización」(2007)では、冒頭から合唱の声量が大きく、打楽器の乾いた音が声の下から押し上げる構造がよくわかる。歌詞を追うのが難しい場合は、スペイン語のリズムと声の上下動だけを聴く。特に全員がユニゾン(同じ音)で歌うサビの部分と、声部が分かれて掛け合う部分の対比は、楽器のないこの音楽がどれだけダイナミックなレンジを持つかを示している。

発展

1980年代の民主化後、アンタイランダー、エル・ガジョ・ファニートが世代を作り、現代ではアグルパシオン・ファルタ・イ・レストが代表格となる。アルゼンチン側のムルガ・ポルテーニャと並走するが、ウルグアイ側はより合唱・劇文化の比重が高い。

出来事

  • 1908: ムルガ・カディス到来
  • 1979: 軍政下の隠れた批評
  • 1985: 民主化後の復興
  • 2018: ユネスコ候補リスト

派生・影響

ムルガ・スペイン、カンドンベ、現代ラテン・ロックと交差。

音楽的特徴

楽器ボンボ、プラチロ、レドブランテ、合唱、声

リズム中速2/4行進、和声合唱、諷刺脚本

代表アーティスト

  • Araca la Canaウルグアイ · 1937年〜
  • Falta y Restoウルグアイ · 1980年〜
  • Agarrate Catalinaウルグアイ · 2001年〜

代表曲

日本との関係

ウルグアイ音楽全体が日本でまだ知られていない状況のなかで、ムルガ・ウルグアヤの認知度はごく限定的だ。タンゴサンバの知名度と比べると情報も少ない。ただしラテン・アメリカ合衆国の社会運動や歌謡史に関心を持つ研究者の間では参照されることがあり、モンテビデオのカーニバルを特集した映像資料が一部流通している。

初めて聴くなら

Agarrate Catalinaの「El Mundo del Revés」(2013)は比較的現代の録音で音質がよく、打楽器と合唱の関係が聴き取りやすい。歌詞の社会風刺を楽しみたいなら、スペイン語のトランスクリプトを探して読みながら聴くと面白い。Falta y Restoの「El Despertar」(1985)は軍政末期の作品で、歌の重さが違う。

豆知識

ムルガの競技大会では、各団体が「何点取れるか」ではなく「観客をどれだけ笑わせ、感動させ、考えさせるか」が評価軸になる。審査員は演目全体の構成、音楽の質、歌詞の社会的鋭さ、衣装の完成度を総合的に採点する。優勝団体はモンテビデオで1年間「その年のムルガ」として語り継がれ、次のカーニバルまで街の話題になる。

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