伝統・民族

ラーヴァニー

Lavani

マハーラーシュトラ州 / インド / 南アジア · 1750年〜

マハーラーシュトラ州の力強い女性舞踊歌で、打楽器ダフとともに演じる官能的・批評的な歌詞と激しいステップが特徴。

どんな音か

ラーヴァニーは打楽器ダフの強打から始まる。ダフは両面を打つ大型の枠太鼓で、連打するたびに低く重い音が部屋全体を満たす。その上で女性の歌い手(ラヴニー)が腰を使った強調動作を交えながら歌う。声は鼻音を使った濃い音色で、マラーティー語の歌詞はしばしば婉曲的な性的比喩や権力批判を含む。テンポは中程度から速め、曲の途中でリズムが倍速になる場面があり、そこで踊り手の動作も急激に激しくなる。かつては男性客向けの興行芸として発達したため、歌詞には挑発的な語りかけが多い。

生まれた背景

マハーラーシュトラ州(現在のインド西部)では18世紀ごろ、ペーシュワー支配下のプネーで現在のラーヴァニーの形式が整ったとされる。もともとは戦場に赴く兵士を鼓舞する歌だったという説もあるが、宮廷や祭礼の場でも演じられた。19世紀以降、劇場(タマーシャー)のなかで演劇と結びついて広まり、植民地時代には社会批評の媒体としても機能した。独立後、映画産業がこのジャンルを吸収し、マラーティー語映画のアイテムナンバーとして定着した。

聴きどころ

ダフのビートが変わるタイミングに注目してほしい。通常の4拍子から、突然2倍速の連打になる瞬間がある。そこが踊り手と観客の関係が最も高まる場面で、演奏者全員の呼吸が合う瞬間でもある。歌い手の声は言葉の子音を強く発音する傾向があり、マラーティー語を知らなくても言葉のリズムが伝わってくる。「Mala Jau De」では歌い出しの低音域から途中で高音へ跳躍する部分が、このジャンルの声の使い方をよく示している。

発展

20世紀には映画(マラーティー・ヒンディー)を通じて全国に広まり、レーカー・ターワダ・ヴィッターバーイ・ナーラーヤンガーオンカルら踊り手が知られた。2000年代以降は『チャイナラ・チャイナラ』『ピンガー』などボリウッド曲がラーヴァニーをポップ化した。

出来事

  • 1750年頃: マラータ宮廷でのラーヴァニー成立。
  • 1947年: マラーティー映画でのラーヴァニー描写。
  • 2002年: 映画『チョウラング・ハト・サートサット・ラージカマル』。
  • 2008年: 映画『ナタランガ』ラーヴァニー再評価。
  • 2018年: ストリートに伝わるラーヴァニー保存政策。

派生・影響

ボリウッド・ダンス・ナンバー、マラーティー映画の音楽様式、現代女性表現の文化政治的議論の対象。

音楽的特徴

楽器ドーラキ、トゥンタネ、ハルモニウム、マンジーラ、声

リズム強い踊り拍、挑発的詞章、即興問答

代表曲

日本との関係

日本ラーヴァニーが取り上げられることはほとんどない。インド舞踊といえばカタックやバラタナティヤムが先に紹介されることが多く、マハーラーシュトラ州固有の民俗芸能はインド文化の文脈でも周縁的な扱いになる。インド料理文化の浸透とともにマラーティー語コミュニティが形成されつつあるが、音楽としての認知は進んでいない。

初めて聴くなら

映像で観ることが前提の音楽なので、YouTubeでタマーシャー(劇場スタイル)のパフォーマンス映像を検索してほしい。ダフの連打と踊り手の足の動きが同期する場面は、音だけでは伝わらない迫力がある。

豆知識

ラーヴァニーの歌い手は「ラヴニー」と呼ばれ、かつては社会的に低い身分とみなされる階層出身者が多かった。現代ではマラーティー語映画や文化振興のなかで再評価が進み、ラーヴァニーを正式な芸術形式として教える学校もプネーに開設されている。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1660年代1750年代ラーヴァニーラーヴァニーポワダーポワダー凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ラーヴァニーを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

インド · 1750年前後 (±25年)

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