伝統・民族

アマジグ音楽

Amazigh (Berber) Music

モロッコ/アルジェリア / 北アフリカ · -500年〜

別名: Berber music / Ahidous / Ahwash

北アフリカ先住民アマジグ(ベルベル)諸民族の集団歌舞群で、リフ、アトラス、サハラ各地域に独自の様式が伝わる。

どんな音か

アマジグ音楽は地域によって音色が大きく変わる。モロッコ北部リフ山脈の音楽では、太鼓(タバル)と両頭太鼓(アラウン)が打ち鳴らされ、集団の踊り手が声を合わせて反復フレーズを積み重ねる。アトラス山脈の音楽では弦楽器ルバブ(一弦の擦弦楽器)やゲンブリ(低音の撥弦楽器)が旋律を担い、声はより即興的に動く。サハラ砂漠南縁のトゥアレグ音楽はまた別の体系で、ティンデという鼓に女性の声が乗る。共通しているのは、声と打楽器が二層構造を作り、その上で舞踏と一体化していること。録音で聴くとリズムの密度に圧倒されるが、もとは屋外で体を動かしながら参加するものだ。

生まれた背景

アマジグ(ベルベル)民族は北アフリカの先住民であり、アラブ人によるイスラム化(7世紀以降)以前から独自の文化を持っていた。フェニキア人、ローマ人、ヴァンダル族、ビザンティン帝国、そしてアラブ・イスラム世界——多くの文明が北アフリカを通過したが、山岳地帯や砂漠に生きたアマジグの音楽は根幹を保ち続けた。20世紀に入るとフランスの植民地支配下で自文化が抑圧され、アマジグ語も公的な場では禁じられた時期があった。1980年代以降のアマジグ文化復権運動の中で、音楽は言語と並んでアイデンティティの象徴として再評価された。

聴きどころ

太鼓のパターンを一本だけ追いかける練習から始めると入りやすい。西洋音楽のような4分の4拍子とは異なる拍の組み方をしていることが多く、5拍や7拍の周期が出てくることもある。声の反復フレーズがどのタイミングで太鼓のサイクルと一致し、どこでずれるかが、このリズム音楽の聴きどころの一つ。踊りの映像と合わせて見ると、足のステップとドラムの対応関係がよくわかる。

発展

1980年代後半からのアマジグ文化復興運動でイドゥル(ベルベル新年)祝祭が再評価され、グループ・タギャクト、イデゥル・ナイト・サイドらが録音活動を開始した。2011年モロッコでアマジグ語が公用語に昇格し、音楽の制度的地位も向上した。

出来事

  • 1980: ベルベル文化春闘
  • 1987: グループ・タギャクト結成
  • 2002: アルジェリアでアマジグ語公用語化
  • 2011: モロッコでアマジグ語公用語化

派生・影響

シャアビ、ライ、グナワ、ガルナーティ、現代世界音楽と交差。

音楽的特徴

楽器ベンディール、ナーカル、笛、合唱

リズムアヒドゥス輪舞、6/8複合、合唱応答

日本との関係

日本ではほとんど知られていない。ワールドミュージックの文脈でモロッコ音楽への関心を持つ人が出発点として触れることがある程度。ただし日本のgnawa(グナワ)ファンやマグレブ音楽の愛好家の間では、アマジグ音楽との接点として参照されることがある。

初めて聴くなら

seeded_tracksに具体的な録音が含まれていないため、代表アーティストや曲名の断定は避ける。「Amazigh music モロッコ」「Tuareg music tinde」などのキーワードで映像付きの音源を探すと、地域による多様性ごと体験できる。ティンデの映像は特に、砂漠の夜に女性たちが集まる様子と音が同時に届くので、音だけより文脈が理解しやすい。

豆知識

アマジグ語(タマジクト)はアラビア文字でも書けるが、ティフィナグと呼ばれる独自の文字体系も現存する。ティフィナグはトゥアレグが現在も日常的に使用しており、モロッコでは2003年以降公立学校での教育に一部導入されている。北アフリカをルーツに持つフランス人移民二世のアーティストが、アマジグの旋律をヒップホップやエレクトロと組み合わせる動きが2010年代から顕著になってきた。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図-500年代1930年代アマジグ音楽アマジグ音楽カビル音楽カビル音楽凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
アマジグ音楽を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

アマジグ音楽 の系譜全体図(多段)を見る

ジャンル一覧へ戻る