伝統・民族

ジョージア多声合唱

Georgian Polyphony

ジョージア / コーカサス · 500年〜

ジョージアの3声多声合唱伝統。

どんな音か

三人の男性による無伴奏合唱。一人が低く厚い基盤を成し、中音者が複雑な装飾ラインを担い、高い声が透明感のあるメロディを紡ぐ。ハーモニーは開放的で、時にクラシック音楽のような浮遊感がある。リズムは自由で、歌詞の内容によってテンポが揺らぎ、機械的ではない。宗教的、もしくは叙情的な雰囲気が支配的で、歌詞は愛、故郷、戦い、信仰などの普遍的テーマを扱う。

生まれた背景

ジョージアはコーカサス地域に位置し、東正教会の信仰が深い。その三声多声合唱は5世紀まで起源がさかのぼるとされ、宗教音楽から発展した。中世から近現代まで、ジョージアの政治的変動(モンゴル支配、ペルシア支配、ロシア帝国統治、ソビエト連邦統治)を経ても、この音楽伝統は保持されてきた。20世紀にはコーカサス地域の民族音楽の中でも独自の価値が認識され、国際的に知られるようになった。

聴きどころ

三つの声の独立性と統一性。基音の厚さと中音の装飾のバランス。高い声の透明感。ハーモニーの解決感。歌詞の抑揚と音楽表現の一致。沈黙と音の関係。複数の合唱団の違い。

発展

19世紀末トビリシ神学校で楽譜化が進む。ソ連期にRustaviアンサンブルが世界化。2001年ユネスコ無形文化遺産登録。Anchiskhati教会聖歌団等が継承する。

出来事

  • 1885: 教会聖歌の楽譜化
  • 1968: Rustaviアンサンブル結成
  • 2001: ユネスコ無形文化遺産登録

派生・影響

アルバニア・コルシカ・サルデーニャ等地中海多声合唱と理論的連関。

音楽的特徴

楽器声(3声無伴奏)、Panduri、Chonguri

リズム自由拍または定拍、3声独立進行、9度・2度の不協和

代表アーティスト

  • Rustavi Ensembleジョージア · 1968年〜
  • Anchiskhati Church Choirジョージア · 1988年〜

代表曲

日本との関係

ジョージア多声合唱日本で認知されるようになったのは、1990年代のワールドミュージック・ブーム期から。Rustavi Ensemble など複数のグループのレコードが輸入された。宗教音楽としての側面と民族音楽としての側面が組み合わさっているため、異なる層の聴者に訴える可能性を持つ。しかし、主流音楽市場での位置づけは依然として限定的。

初めて聴くなら

Rustavi Ensemble『Chakrulo』(1977)。ジョージア多声合唱の最高傑作の一つで、三声のハーモニーが完璧に調和。夜間の静寂の中で聴く。より宗教的な背景を求めるなら、Anchiskhati Church Choir『Shen Khar Venakhi』(1995)。教会で実際に唱われる伝統的な聖歌。

豆知識

ジョージア多声合唱は UNESCO の『人類の無形文化遺産』として登録されており、その価値が国際的に認識されている。ジョージア音楽学者たちは、この合唱様式がグレゴリオ聖歌とは異なる独自の進化を遂げたと主張し、西洋音楽史の再考を促している。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジョージア多声合唱を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

ジョージア多声合唱 の系譜全体図(多段)を見る

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