オルティン・ドー
モンゴルの長唱。一音節を極めて長く伸ばす儀礼的歌曲。
どんな音か
生まれた背景
聴きどころ
ノロブバンザドの「Uyahan Zambuutivin Naran」(1980年)では、最初の一音が出た瞬間から声がどこまで伸び続けるかを計測するつもりで聴くとよい。息継ぎはほぼ聴こえず、声の揺れがむしろ音の「生命」として聴こえる。馬頭琴が声の下で持続するとき、2つの持続音が重なる瞬間の和声が自然に生まれる場所に注目するとよい。
発展
20世紀前半まで地域の名歌手による継承だったが、社会主義期に国営放送・国立劇場が録音と保存を担った。1990年代以降は内モンゴル・モンゴル国双方で再評価が進み、ノロブバンザド・ジャムヤン・ドルジダグワら名歌手が国際的に活躍した。
出来事
- 13世紀: 帝国期の宮廷歌唱。
- 1962年: 国立モンゴル劇場での長唱録音。
- 1988年: ノロブバンザド国際公演。
- 2005年: ユネスコ「人類の口承及び無形遺産の傑作」宣言(モンゴル・中国共同)。
- 2008年: ユネスコ無形文化遺産代表一覧表に統合登録。
派生・影響
現代モンゴル創作歌曲・モンゴル映画音楽の素材となり、内モンゴル・ハルハ族・ブリヤート族など各地の長唱伝統が比較される。
音楽的特徴
楽器声、馬頭琴(モリン・フール)
リズム極めて緩やかな自由律、装飾的母音引き伸ばし、ノグロー(装飾)技法
代表アーティスト
- ノロブバンザド
- Khusugtun
代表曲
Uyahan Zambuutivin Naran — ノロブバンザド (1980)
日本との関係
初めて聴くなら
ノロブバンザドの「Uyahan Zambuutivin Naran」(1980年)から始めるのが最善。声が伸び続ける体験を正面から受け止めるために、最初の2〜3分は雑音のない環境で聴いてほしい。
豆知識
オルティン・ドーの歌い手は伝統的に喉への負担を最小限にする発声法を使うとされ、正しく歌えば声は衰えにくいという。ノロブバンザドは80代まで現役で歌い続け、2002年に亡くなったが晩年の録音でも声の持続力は保たれていた。この発声法の科学的分析はモンゴルと欧米の音声学者によって進められているが、完全に解明されてはいない。
