長唄
歌舞伎舞踊の伴奏として発展した三味線音楽の代表的様式。
どんな音か
三味線(細棹)と歌(唄)が中心で、能管(横笛)・小鼓・大鼓・太鼓が場面に応じて加わる。三味線の音は金属的な明るさを持ち、ばちで弦を弾く音がはっきり聴こえる。歌は「コロコロ」「ツン」などの擬音語的な音型を含む独特の旋律で、音域は広くなく、声の色が前面に出る。速度変化が大きく、緩やかな「おとし」と急速な「序の口」を1曲の中で行き来する。歌舞伎の舞台では演奏者が舞台上に並んで演奏することもあり、音楽と踊りが同じ空間で共存する。
生まれた背景
聴きどころ
「勧進帳」の冒頭、三味線が単音で「間(ま)」を取りながら始まる部分で、音と沈黙の比率に耳を傾けてほしい。次に声が入ると、母音を長く伸ばしながら音程が微妙にゆらぐ「こぶし」の技術が聴ける。歌舞伎の場面では舞台の動きと連動しているが、音源だけを聴く場合は三味線のリズムの刻み方が「息づかい」に似た自然なゆれを持っていることに気づく。
発展
明治期に歌舞伎座の整備とともに長唄演奏家が職業として確立し、東京音楽学校(現東京藝大)に邦楽科が設けられた。20世紀には素演奏会・録音の普及で鑑賞音楽としての地位を獲得した。現代では東京藝大邦楽科・国立劇場が中心的伝承機関となっている。
出来事
- 17世紀末: 江戸歌舞伎で長唄が定着。
- 1773年: 杵屋家の勢力が確立。
- 1840年: 河竹黙阿弥らによる長唄舞踊曲の隆盛。
- 1888年: 東京音楽学校に邦楽科設置(後に独立)。
- 1955年: 重要無形文化財指定。
派生・影響
邦楽合奏(三曲合奏)・端唄・小唄など江戸後期の三味線歌曲群と互いに影響しあった。歌舞伎舞踊の音楽様式を規定し、日本舞踊の伴奏ジャンルとしても継承される。
音楽的特徴
楽器細棹三味線、唄方、笛、小鼓、大鼓、太鼓
リズム歌舞伎舞踊の段構成、序奏(前弾き)・段切れ、囃子の入りと唄の応答
代表アーティスト
- 杵屋六四郎
- 杵屋勝四郎
代表曲
日本との関係
初めて聴くなら
「勧進帳」の演奏録音を聴く場合は、歌詞の意味を事前に簡単に読んでおくと場面転換がつかみやすい。三味線の技術に興味があれば、演奏者のばちの動きが見える映像(NHKアーカイブスや歌舞伎座公式映像)で聴くと音の出る瞬間と音の関係がより具体的にわかる。
豆知識
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- 伝統・民族奄美島唄
