トルコ古典音楽
オスマン宮廷以来の伝統を持つ、マカームを基盤とするトルコの古典音楽。
どんな音か
「マカーム」と呼ばれる旋法体系を軸にした音楽で、西洋の長調・短調とは異なる音階が使われる。マカームは単なる音の並びではなく、どの音に向かって解決するか、どの音を強調するか、どの順番で音域を上昇・下降するかといった「音の動きのルール」のセットである。楽器はウード(撥弦)、カーヌーン(箱型ツィター)、タンブール(長頸リュート)、ネイ(葦笛)、ケマン(ヴァイオリンに近い擦弦楽器)が主要で、オスマン宮廷では大規模なアンサンブルが演奏した。Tanburî Cemil Bey は20世紀初頭にタンブールの演奏技術を飛躍的に高め、蝋管録音を多数残した。
生まれた背景
聴きどころ
Tanburî Cemil Bey の「Çeçen Kızı」(1910年)では、蝋管録音特有のノイズの向こうにタンブールの弦が伸びる音を聴くとよい。西洋の音階とは微妙にずれた音程(マカーム固有の中間音)が耳に馴染むと、メロディーの動きの論理が少しずつ見えてくる。Münir Nurettin Selçukの「Endülüs'te Raks」(1955年)はより聴きやすい録音で、ウードと弦楽が絡む贅沢なアレンジのなかで声の装飾音を追うと楽しい。
代表アーティスト
- Tanburî Cemil Bey
- Münir Nurettin Selçuk
- Zeki Müren
代表曲
- Çeçen Kızı — Tanburî Cemil Bey (1910)
- Endülüs'te Raks — Münir Nurettin Selçuk (1955)
- Manastır Türküsü — Zeki Müren (1955)
- Suzinak Saz Semaisi (1900)
Hicaz Mandıra — Tanburî Cemil Bey (1912)
日本との関係
初めて聴くなら
Münir Nurettin Selçukの「Endülüs'te Raks」(1955年)から聴き始めるのが入りやすい。次にTanburî Cemil Bey の「Çeçen Kızı」(1910年)を聴いて、100年前の演奏がどれだけ洗練されているかを感じるのもよい。
豆知識
マカームは約400種が理論書に記録されているが、実際のコンサートで演奏されるのは50種程度とされる。マカームの名前にはしばしば地名・民族名・季節・時間帯が含まれており、「ヒジャーズ」(アラビア半島西部の地名)、「ラースト」(ペルシア語で「まっすぐ」)など、音楽の外の世界への参照が名称に埋め込まれている。
