古典

トルコ古典音楽

Turkish Classical

トルコ / 中東 · 1500年〜

オスマン宮廷以来の伝統を持つ、マカームを基盤とするトルコの古典音楽。

どんな音か

「マカーム」と呼ばれる旋法体系を軸にした音楽で、西洋の長調・短調とは異なる音階が使われる。マカームは単なる音の並びではなく、どの音に向かって解決するか、どの音を強調するか、どの順番で音域を上昇・下降するかといった「音の動きのルール」のセットである。楽器はウード(撥弦)、カーヌーン(箱型ツィター)、タンブール(長頸リュート)、ネイ(葦笛)、ケマン(ヴァイオリンに近い擦弦楽器)が主要で、オスマン宮廷では大規模なアンサンブルが演奏した。Tanburî Cemil Bey は20世紀初頭にタンブールの演奏技術を飛躍的に高め、蝋管録音を多数残した。

生まれた背景

オスマン帝国の宮廷(15〜19世紀)が後援したことでその技術と理論が体系化された。ビザンツ・ペルシア・アラブ・中央アジアの音楽要素が融合した複合的な伝統で、どの要素が先でどこから来たかの区別が難しい。19世紀のタンジマート改革以降、西洋の管弦楽法が導入されながらも「アラトルカ(トルコ風)」と「アラフランカ(フランス風=西洋風)」の区別が意識されるようになった。トルコ共和国成立後の1920〜30年代には一時ラジオ放送でこの音楽が禁止された時期があったが、1976年のTRT(トルコ国営放送)によるアーカイブ整備が伝統保存に貢献した。

聴きどころ

Tanburî Cemil Bey の「Çeçen Kızı」(1910年)では、蝋管録音特有のノイズの向こうにタンブールの弦が伸びる音を聴くとよい。西洋の音階とは微妙にずれた音程(マカーム固有の中間音)が耳に馴染むと、メロディーの動きの論理が少しずつ見えてくる。Münir Nurettin Selçukの「Endülüs'te Raks」(1955年)はより聴きやすい録音で、ウードと弦楽が絡む贅沢なアレンジのなかで声の装飾音を追うと楽しい。

代表アーティスト

  • Tanburî Cemil Beyトルコ · 1899年〜1916
  • Münir Nurettin Selçukトルコ · 1923年〜1981
  • Zeki Mürenトルコ · 1951年〜1996

代表曲

日本との関係

日本ではトルコ料理店のBGMや観光映像のなかでこの系統の音楽が流れることがあるが、トルコ古典音楽として独立して聴かれることは少ない。Zeki Mürenはトルコで国民的スターだが、日本での知名度はほぼない。古楽・世界音楽の専門家の間では研究対象として扱われる。

初めて聴くなら

Münir Nurettin Selçukの「Endülüs'te Raks」(1955年)から聴き始めるのが入りやすい。次にTanburî Cemil Bey の「Çeçen Kızı」(1910年)を聴いて、100年前の演奏がどれだけ洗練されているかを感じるのもよい。

豆知識

マカームは約400種が理論書に記録されているが、実際のコンサートで演奏されるのは50種程度とされる。マカームの名前にはしばしば地名・民族名・季節・時間帯が含まれており、「ヒジャーズ」(アラビア半島西部の地名)、「ラースト」(ペルシア語で「まっすぐ」)など、音楽の外の世界への参照が名称に埋め込まれている。

影響・派生で結ばれたジャンル

トルコ古典音楽を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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