トルヴェール
12〜13世紀の北仏オイル語圏で、トルバドゥール伝統を引き継いだ宮廷詩人音楽家。
どんな音か
生まれた背景
聴きどころ
アダン・ド・ラ・アルの「Robins m'aime」は短い繰り返し形式で、羊飼いの少女の語りが素朴な旋律で歌われる。単旋律の中で音節がどう長短に割り振られているかを追うと、オイル語のリズムと音楽の関係が聴こえてくる。伴奏ヴィエルが旋律の合間に短い装飾を入れる箇所も聴き逃さないようにするとよい。
発展
シャンパーニュ伯ティボー4世(1201〜1253)、ナバラ王として南仏文化との接続を保った。13世紀後半にはアダン・ド・ラ・アル「ロビンとマリオンの劇」(1283年頃)など演劇的作品も生まれ、複声化の試みも現れる。1300年頃までに様式は飽和し、アルス・ノヴァの精緻な多声音楽に主導権を譲った。
出来事
- 1180年頃: コノン・ド・ベテューヌら最初期のトルヴェール
- 1230年頃: ティボー・ド・シャンパーニュ全盛
- 1283年頃: アダン・ド・ラ・アル「ロビンとマリオンの劇」
- 1300年頃: トルヴェール伝統の終焉
派生・影響
アダン・ド・ラ・アルの多声シャンソンはアルス・ノヴァのフォルム・フィクスへ直接つながり、後のシャンソン伝統の基礎となった。中世写本研究を通じて20世紀の古楽復興運動でも盛んに上演されている。
音楽的特徴
楽器声、ヴィエル、リュート
リズム単旋律、定型詩形式、多声化の萌芽
代表アーティスト
- アダン・ド・ラ・アル
- ギヨーム・ド・マショー
代表曲
- L'autrier par la matinee (1230)
- Le Jeu de Robin et Marion — アダン・ド・ラ・アル (1283)
- Robins m'aime — アダン・ド・ラ・アル (1283)
- Pour mon coeur réjouir (1240)
日本との関係
初めて聴くなら
アダン・ド・ラ・アルの「Robins m'aime」と「Le Jeu de Robin et Marion」からの抜粋を聴くとよい。短い曲が集まった劇音楽なので、聴き疲れせずにトルヴェールの雰囲気をつかめる。
豆知識
ギヨーム・ド・マショーはトルヴェールの末期と新しい多声音楽の時代の橋渡しに位置するが、彼は詩人としても一流で、自作の詩集を自ら編集して複数の写本に残した。中世ヨーロッパの音楽家としては珍しく、自分の作品が後世に伝わることを意識して行動した人物とされている。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- 古典ノートルダム楽派
