古典

ノートルダム楽派

Notre-Dame School

パリ / フランス / 西ヨーロッパ · 1160〜1250年

12世紀後半〜13世紀のパリ、ノートルダム大聖堂を中心に活動した多声音楽の楽派。

どんな音か

ノートルダム楽派は、12世紀後半から13世紀のパリ、ノートルダム大聖堂を中心に発展した多声音楽の楽派。レオニヌスとペロタンが代表とされ、グレゴリオ聖歌を土台に長く伸ばした声部と動く上声を重ねた。西洋音楽史で、複数の声部を組織的に扱う大きな転換点である。

生まれた背景

パリ大学や大聖堂文化が発展した時代に、典礼音楽の壮麗化と記譜法の進歩が重なった。レオニヌスの「Magnus Liber Organi」は大規模なオルガヌム集として知られ、ペロタンは3声、4声の作品で多声の響きをさらに拡大した。石造大聖堂の残響も、この音楽のゆったりした時間感覚と深く関わる。

聴きどころ

下の声が聖歌を非常に長く伸ばし、上の声がその上を細かく動く構造を聴く。現代の和声進行とは違い、音が大聖堂の空間に積み上がる感覚が大事である。ペロタンの4声作品では、同じ響きが反復されながら少しずつ変わり、荘厳な静止と運動が同時に生まれる。

発展

1170年頃のレオニヌスは「マグヌス・リベル・オルガニ」で典礼暦を通じた2声オルガヌムを編纂し、後継のペロタンが3声・4声化と新しい長大なディスカントゥス様式を確立した。リズム・モード(6種の定型リズム)の体系化により、対位法的書法と精緻なリズム構築が可能になった。フランコ・フォン・ケルンの計量記譜論が後を継ぎ、アルス・アンティクアからアルス・ノヴァへの橋渡しとなった。

出来事

  • 1163: パリ・ノートルダム大聖堂着工
  • 1170年頃: レオニヌス「マグヌス・リベル・オルガニ」
  • 1198: ペロタン「Viderunt omnes」4声
  • 1230年頃: フランコ・フォン・ケルン、計量記譜法理論

派生・影響

ノートルダム楽派の革新は、その後のモテット、アルス・アンティクア、アルス・ノヴァを経て、ルネサンス・ポリフォニーまで続く対位法伝統の出発点となった。20世紀の作曲家(メシアン、ペルト、坂本龍一)も中世多声の透明な響きから多くを汲んだ。

音楽的特徴

楽器男声合唱

リズムリズム・モード、3声・4声の対位

代表アーティスト

  • レオニヌスフランス · 1150年〜1201
  • ペロタンフランス · 1180年〜1238

代表曲

日本との関係

日本では古楽演奏、音楽史講義、教会建築と音響の研究で扱われる。一般的なクラシック公演では珍しいが、ノートルダム大聖堂火災後には関連する中世音楽への関心も高まった。日本の聴衆には、和声の美しさより、建築空間と声が一体になる音楽として紹介すると伝わりやすい。

初めて聴くなら

入口は「Viderunt omnes (4声) — ペロタン (1198)」。長い響きと多声の荘厳さが一度に分かる。続けて「Sederunt principes — ペロタン (1199)」でさらに大きな構築を、「Magnus Liber Organi — レオニヌス (1175)」で古いオルガヌムの流れを聴くとよい。

豆知識

ノートルダム楽派の音楽は、紙の上の作曲技術だけでなく、大聖堂の響きを前提にしている。長い残響の中では速い変化より、持続する音とゆっくりした重なりが力を持つ。建築が音楽の時間を作っていたとも言える。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図900年代1160年代1230年代ノートルダム楽派ノートルダム楽派オルガヌムオルガヌムアルス・アンティクアアルス・アンティクア凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ノートルダム楽派を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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