古典

タッパー

Tappa

インド / 南アジア · 1780年〜

別名: Punjabi Tappa

パンジャーブのラクダ駆りの歌から派生した、超高速装飾の準古典声楽。

どんな音か

タッパは、女性歌手による超高速装飾を特徴とする古典声楽形式。音域は非常に広く、低音から超高音まで、1曲の中で自由に行き来する。ハーモニウムとタビラ(ペアの太鼓)で伴奏されることが多い。リズムは複雑なターラ(リズム・サイクル)を基礎としており、その中での歌い手の自由度は相当に高い。音色は華やかで、装飾音の密度が非常に濃い。技巧性が最も重視される形式で、歌い手の修行度合いが最も直接的に表現される。

生まれた背景

タッパはパンジャーブ地方に起源し、ラクダ駆りたちの労働歌が、宮廷音楽に昇華された過程を示している。18世紀には既に古典形式として認識されており、その後、世俗的な快楽音楽から、より内省的な古典的深さを持つ形式へと進化した。20世紀のインド古典音楽復興運動の中で、タッパは『忘れられた古典形式』として再発見され、現在は女性声楽家による高度な技巧表現の場となっている。

聴きどころ

超高速の装飾音がどのような旋律パターンを形成しているかを聴き分けること。ターラ(リズム・サイクル)の中での歌い手の自由性と、その制約の間の緊張関係を理解することが重要。各声部(サンガナ・ラッジュ)の役割も異なり、主旋律と伴奏の関係を感じ取ることで、古典音楽の構造が明らかになる。

発展

20世紀には西ドゥルガーバーイー・パルワール・ニラート・ナラヤン・ゴーシュ・ギリジャー・デーヴィーらがタッパーを得意とした。ベンガル地方では「タッパー(ベンガル化したもの)」として独自の歌詞・節で発展した。

出来事

  • 18世紀末: シャーリー・ミヤーンによる創始。
  • 19世紀: ラクナウ宮廷での発展。
  • 1815年頃: ニドゥ・ババーがベンガル・タッパー創作。
  • 1970年代: ギリジャー・デーヴィーがタッパー定番化。
  • 2000年代: タッパー消失危機論。

派生・影響

ベンガル・タッパー(ニドゥ・ババー作)・カヤールの装飾技法・ボリウッド古典歌の早回し旋律に影響した。

音楽的特徴

楽器声、ターンプラ、タブラ、ハルモニウム

リズムザムザマ(連続装飾)、短い曲、超高速の旋律変奏

代表アーティスト

  • ギリジャー・デーヴィーインド · 1949年〜2017

代表曲

日本との関係

タッパはインド古典音楽の学術的研究では知られているが、一般的な日本のリスナーへの認知度は非常に低い。ただし、インド伝統音楽への関心層では、徐々に認識が高まっている。

初めて聴くなら

ギリジャー・デーヴィー『タッパー in Raga Kafi』(1985年)。この演奏は、タッパの古典的形式を、最も威厳を持って示したもの。ギリジャー・デーヴィーは20世紀最高の女性古典歌手の一人で、彼女の声はインド古典声楽の標準を確立した。夜間に、完全な集中力が必要な環境で聴くことが推奨される。

豆知識

タッパは『パンジャーブの愛の形式』とも呼ばれ、その歌詞は恋愛をテーマにしているものが多い。しかし、歌い手の技巧性が最も重視されるため、歌詞の意味よりも、音響的な複雑性が前面に出てくる。この矛盾は、インド古典音楽の『形式美と内容のディアレクティク』を象徴している。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1700年代1780年代タッパータッパーカヤールカヤール凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
タッパーを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

インド · 1780年前後 (±25年)

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