嗩吶吹打楽
嗩吶(チャルメラ)を中心とする中国の祝祭・葬礼吹奏楽。
どんな音か
嗩吶(スオナ)は、中国の大口径ダブル・リード楽器で、非常に大きな音量で、高めの音域を占有する。その上に他の楽器(トランペット的な楽器、太鼓、シンバル)が重ねられ、全体として祝祭的で耳目を集める音響が完成する。嗩吶の旋律は非常に装飾的で、音を曲げたり、滑らせたり、スピード感を持たせたりと、技巧を尽くした演奏がなされる。一曲の構成は、相当に長く、場面ごとに異なる旋律が繰り返される。
生まれた背景
嗩吶の音楽伝統は、少なくとも16世紀には中国で確立されていた。結婚式、葬礼、祭りといった、コミュニティの人生的機転にこの音楽が伴われることで、社会的に不可欠な役割を果たしてきた。特に葬礼の場では、この楽器の派手な音が、故人を天界へ見送るための必要条件とされた。20世紀の社会変化で、葬礼音楽としての役割は減じたが、祝祭音楽としての需要は続いている。
聴きどころ
嗩吶の高い音と、他の楽器の低い音の対比に注目。嗩吶の装飾技法(音を曲げる、跳ねさせるなど)がどのように表現されるかを聴き取ること。全体のテンポが一定に見えながら、実は微妙に揺らぐポイントを感じ取る。
発展
20世紀後半、職業化と個人独奏家の台頭で嗩吶が舞台音楽となり、任同祥『百鳥朝鳳』が代表曲として知られる。映画『紅高粱』(1987年)・『百鳥朝鳳』(2016年)で農村吹打文化が描かれ、国民的感心を集めた。
出来事
- 16世紀: 嗩吶の中国伝来。
- 清代: 鼓吹班の村落定着。
- 1953年: 任同祥『百鳥朝鳳』録音。
- 1987年: 映画『紅高粱』。
- 2016年: 映画『百鳥朝鳳』。
派生・影響
中国民族管弦楽団の主要楽器となり、また映画音楽・現代作曲家の素材として用いられる。
音楽的特徴
楽器嗩吶、笙、笛、太鼓、鉦、鈸
リズム主奏嗩吶の高音域、激しい拍打ち、即興的合奏
代表アーティスト
- 任同祥
代表曲
百鳥朝鳳 — 任同祥 (1953)
日本との関係
初めて聴くなら
任同祥(レン・トンシャン)による『百鳥朝鳳』(1953年)。この曲は嗩吶の技巧を最も象徴的に示したもので、朝が来たことを『百の鳥が鳳凰に挨拶する』というメタファーで表現している。早朝に、活動的な雰囲気の中で聴くのが最適。
豆知識
嗩吶の音量と音色は、建物の中に充満するレベルで、その存在感は音響としてだけでなく、物理的にも感じられる。中国の農村部では、嗩吶の音が聞こえることで、付近住民が『何かの行事が行われている』と即座に認識する。つまり、この楽器は、情報通信手段としても機能していた。
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- 古典ウイグル十二ムカーム
- 伝統・民族客家山歌
