声明
日本仏教の儀礼で僧侶が経典・讃歌を旋律的に唱える伝統。日本古典音楽の祖型のひとつ。
どんな音か
声明は、拍子で前へ進む歌ではなく、僧侶の息が堂内に長く広がる声の音楽。低く始まった声が母音を保ったまま少しずつ揺れ、句の終わりで静かに沈む。複数人で唱えると完全なユニゾンではなく、わずかなずれが厚い雲のような響きを作る。木魚や鐘が入る場面でも、主役は打点ではなく、経文の音節と声の余韻である。
生まれた背景
聴きどころ
言葉が聞き取れなくても、声がどの母音で長く伸びるかを追うとよい。音程の上下は大きくないが、節の途中で小さく曲がる場所がある。堂内録音では、声が消えた後の残響も聴きどころで、次の句に入るまでの間が儀礼の時間を作っている。
発展
12世紀大原三千院の融通念仏聖賢(良忍)が天台声明を体系化、真言宗では覚禅・寛信らが継承した。雅楽・能・平曲・浄瑠璃など日本古典音楽の旋法・節回しの源泉となり、近代以降は東京芸大・大谷大学などで研究保存が進んだ。1970年代以降タケミツや武満徹らが現代音楽との交流を促し、世界的にも知られた。
出来事
- 806: 空海帰国、真言声明の輸入
- 1124: 良忍、大原で融通念仏・天台声明体系化
- 1700頃: 浄土宗・浄土真宗で和讃声明確立
- 1985: NHK『声明の世界』連続放送、一般認知向上
派生・影響
雅楽歌物、能の謡、平曲、浄瑠璃、長唄など日本声楽全般、戦後現代音楽(武満徹『November Steps』など)にも影響を残す。
音楽的特徴
楽器男声(独唱・斉唱)、磬(けい)、鈴、太鼓
リズム自由リズム、呂律(リュー・リョ)旋法、博士譜、長大メリスマ
代表アーティスト
- Tendai Shōmyō Choir of Mount Hiei
- Shingon Shōmyō Choir of Mount Kōya
代表曲
Daihannya Tendoku Shōmyō — Tendai Shōmyō Choir of Mount Hiei
Rishukyō Hōraku — Shingon Shōmyō Choir of Mount Kōya
日本との関係
初めて聴くなら
まずは「Daihannya Tendoku Shōmyō — Tendai Shōmyō Choir of Mount Hiei」で、声のまとまりと堂内の響きを聴くとよい。真言系の響きに触れるなら「Rishukyō Hōraku — Shingon Shōmyō Choir of Mount Kōya」。短く切らず、一つの句が消えるまで待つ聴き方が合う。
