宗教・霊歌

声明

Shōmyō (Japanese Buddhist Chant)

比叡山・高野山 / 日本 / 東アジア · 800年〜

別名: しょうみょう

日本仏教の儀礼で僧侶が経典・讃歌を旋律的に唱える伝統。日本古典音楽の祖型のひとつ。

どんな音か

声明は、拍子で前へ進む歌ではなく、僧侶の息が堂内に長く広がる声の音楽。低く始まった声が母音を保ったまま少しずつ揺れ、句の終わりで静かに沈む。複数人で唱えると完全なユニゾンではなく、わずかなずれが厚い雲のような響きを作る。木魚や鐘が入る場面でも、主役は打点ではなく、経文の音節と声の余韻である。

生まれた背景

日本の仏教儀礼の中で、経典や讃歌を旋律的に唱える伝統として育った。奈良、平安期に大陸から伝わった仏教音楽の要素を受け取りながら、天台、真言など各宗派の法会で形を変えてきた。宮廷音楽や後の能、平曲などと直接同じものではないが、日本の古い声の文化を考える時の土台の一つになる。

聴きどころ

言葉が聞き取れなくても、声がどの母音で長く伸びるかを追うとよい。音程の上下は大きくないが、節の途中で小さく曲がる場所がある。堂内録音では、声が消えた後の残響も聴きどころで、次の句に入るまでの間が儀礼の時間を作っている。

発展

12世紀大原三千院の融通念仏聖賢(良忍)が天台声明を体系化、真言宗では覚禅・寛信らが継承した。雅楽・能・平曲・浄瑠璃など日本古典音楽の旋法・節回しの源泉となり、近代以降は東京芸大・大谷大学などで研究保存が進んだ。1970年代以降タケミツや武満徹らが現代音楽との交流を促し、世界的にも知られた。

出来事

  • 806: 空海帰国、真言声明の輸入
  • 1124: 良忍、大原で融通念仏・天台声明体系化
  • 1700頃: 浄土宗・浄土真宗で和讃声明確立
  • 1985: NHK『声明の世界』連続放送、一般認知向上

派生・影響

雅楽歌物、能の謡、平曲、浄瑠璃、長唄など日本声楽全般、戦後現代音楽(武満徹『November Steps』など)にも影響を残す。

音楽的特徴

楽器男声(独唱・斉唱)、磬(けい)、鈴、太鼓

リズム自由リズム、呂律(リュー・リョ)旋法、博士譜、長大メリスマ

代表アーティスト

  • Tendai Shōmyō Choir of Mount Hiei日本 · 800年〜
  • Shingon Shōmyō Choir of Mount Kōya日本 · 816年〜

代表曲

日本との関係

声明日本の寺院儀礼そのものに根を持つ。現在も法要で唱えられるほか、天台声明や真言声明の公演、現代音楽との共同制作、録音資料を通じて聴くことができる。観光的な和風BGMとは別に、宗教実践としての場を持つ音楽である点は大切にしたい。

初めて聴くなら

まずは「Daihannya Tendoku Shōmyō — Tendai Shōmyō Choir of Mount Hiei」で、声のまとまりと堂内の響きを聴くとよい。真言系の響きに触れるなら「Rishukyō Hōraku — Shingon Shōmyō Choir of Mount Kōya」。短く切らず、一つの句が消えるまで待つ聴き方が合う。

豆知識

声明は「声明」と読む。漢字だけ見ると声明文の「声明」と同じだが、仏教音楽では経や讃を声に出して唱える伝統を指す。楽譜にあたる博士と呼ばれる記号体系もあり、声の動きを文字の横に記して伝えてきた。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図250年代800年代声明声明梵唄(ファンバイ)梵唄(ファンバイ)神楽神楽凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
声明を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

日本 · 800年前後 (±25年)

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