管絃
雅楽のうち舞を伴わない器楽合奏形態。
どんな音か
笙(しょう)の複雑な和音が空間を支配し、琵琶や箏がそこに旋律を溶かし込む。篳篥(ひちりき)のやや高い音色が時折浮き上がる。テンポは遅く、1小節が数秒かかることもあり、その間に楽器の音が微妙に響き続ける。一見単調だが、10人前後の楽器奏者が同じテンポ軸で微調整を重ねているため、全体から出てくる空気感は厳密で、かつどこか呼吸をしている。
生まれた背景
聴きどころ
各楽器がどの層を担当しているのかを追うのではなく、全体から立ち上る単一の音響体をつかむこと。篳篥が顔を出したときにそこだけ聴くのではなく、その背後の笙の和音との距離感を感じること。また、音が途絶えた瞬間に次の楽器がどのように鳴り始めるのか、その接続の自然さに耳を向けると、舞台裏での楽器間の呼応が分かる。
発展
三方楽所において代々伝承され、流派ごとに節回しや装飾に差異を生じた。明治以降は宮内省・宮内庁楽部が中心となり、海外公演や録音を通じて広く知られるようになった。雅楽研究家の小泉文夫らによる学術的整理も進んだ。
出来事
- 10世紀: 宮中『管絃の御遊』として定着。
- 12世紀: 『管絃音義』など楽書整備。
- 1870年: 宮内省雅楽局で正式編成として継承。
- 1955年: 重要無形文化財指定。
- 2009年: 雅楽としてユネスコ無形文化遺産登録。
派生・影響
舞楽との対比を成す形式として雅楽の二大柱を構成する。現代雅楽創作のベース編成としても用いられ、武満徹『秋庭歌』などが管絃編成を拡張している。
音楽的特徴
楽器笙、篳篥、龍笛、楽箏、楽琵琶、鞨鼓、太鼓、鉦鼓
リズム序破急、早只拍子・延只拍子、笙の合竹による持続和音
日本との関係
初めて聴くなら
豆知識
古来、管絃の編成は『十人前後の楽器奏者』という決まりが緩く、演奏の場や季節によって楽器数が変わった。冬は低い音を出す楽器を増やし、春は高めの楽器を優先するなど、季節美学が音の選択に反映されていた。
