古典

シャンソン(ルネサンス)

Renaissance Chanson

フランス / 西ヨーロッパ · 1430〜1600年

15〜16世紀フランス・フランドルで流行した世俗多声歌曲のジャンル。

どんな音か

ルネサンス・シャンソンは、15世紀から16世紀のフランス語圏で広まった世俗多声歌曲。恋愛、戦争、鳥の声、酒宴、日常の情景を、複数の声で軽やかに歌う。宮廷的な洗練を持ちながら、ミサ曲より言葉の身近さがあり、クレマン・ジャヌカンの作品では鳴き声や戦場の擬音まで音楽化される。

生まれた背景

フランス、フランドルの作曲家たちが、宮廷文化と印刷楽譜の広がりの中で発展させた。ジョスカン・デ・プレのような作曲家は深い感情表現を、ジャヌカンは描写的で劇的な合唱を得意とした。楽譜印刷の普及により、シャンソンはヨーロッパ各地へ流通し、家庭や宮廷で歌われた。

聴きどころ

歌詞の意味と声部の動きを合わせて聴く。鳥を歌う曲では声がさえずりのように跳ね、戦争を描く曲では短い音型が騒がしく重なる。宗教曲より拍の感覚がつかみやすく、言葉の絵画的な扱いが魅力である。無伴奏合唱で聴くと声の絡みが分かりやすく、器楽伴奏入りでは舞曲に近い明るさが出る。

発展

前期はフォルム・フィクスに沿った3声書法だったが、ジョスカンが模倣対位法を導入、16世紀前半にはジャヌカン、セルミジ、クローダン・ド・セルミジが描写的・洒脱な「パリ・シャンソン」を確立した。後期はラッスス、ル・ジュンヌが半音階や言葉絵画を取り入れ、近代音律論争にも関与した。

出来事

  • 1480年頃: バンショワ・デュファイのブルゴーニュ・シャンソン
  • 1528: アタンニャンによるパリでの楽譜印刷開始
  • 1529: ジャヌカン「鳥の歌」「戦争」
  • 1571: ル・ジュンヌら「アカデミー・ド・ポエジー・エ・ド・ミュージック」、量的詩律実験

派生・影響

イタリアではマドリガーレ、ドイツではテノール・リート、英国ではエアへ翻案された。バロックのフランス・エアやベルギー語圏のマドリガーレ系統にも影響を与え続けた。

音楽的特徴

楽器3〜5声合唱(任意でリュート)

リズム短い有節形式、模倣対位、描写的書法

代表アーティスト

  • ギヨーム・デュファイフランドル · 1415年〜1474
  • ジョスカン・デ・プレフランドル · 1470年〜1521
  • クレマン・ジャヌカンフランス · 1525年〜1558
  • オルランド・ディ・ラッソフランドル/ドイツ · 1555年〜1594

代表曲

日本との関係

日本では古楽合唱、大学の音楽史、ルネサンス音楽の演奏会で触れられる。フランス語の古い発音や多声の読み方は専門的だが、ジャヌカンの「鳥の歌」や「戦争」は描写が分かりやすく、初めての聴衆にも届きやすい。日本の合唱団がレパートリーとして取り上げることもある。

初めて聴くなら

入口は「Le chant des oiseaux — クレマン・ジャヌカン (1529)」。鳥の声を多声で描く楽しさがすぐ伝わる。続けて「La guerre — クレマン・ジャヌカン (1529)」で戦場描写の迫力を、「Mille regretz — ジョスカン・デ・プレ (1520)」でしっとりした別れの表現を聴くと幅が見える。

豆知識

現代日本語のシャンソンは近代フランス歌曲を指すことが多いが、ルネサンス・シャンソンはそれよりはるかに古い多声歌曲である。同じフランス語の歌でも、カフェの歌ではなく宮廷や家庭で楽譜から歌われた音楽として理解したい。

影響・派生で結ばれたジャンル

シャンソン(ルネサンス)を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

シャンソン(ルネサンス) の系譜全体図(多段)を見る

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