伝統・民族

ケベック・フォーク

Quebec / French-Canadian Folk

ケベック州 / カナダ / 北米 · 1700年〜

カナダ・ケベック州のフランス系住民コミュニティで保持される、フィドル・足踏み・口述音楽が中核の民俗音楽。

どんな音か

ケベック・フォークの音は、バイオリン(フィドル)のヴィブラートが効いた旋律と、足踏みのリズムが層をなす。足踏みは単なる拍子取りではなく、相当な音量で床を打つため、楽器の音と足音が一体化した音響が生まれる。歌われるメロディは長めの文節で、歌詞は主にフランス語。アコーディオンも登場し、バイオリンを支える低音と和音を提供する。全体に、粗削りでありながら、長年の反復による洗練が感じられる音色。

生まれた背景

17世紀のフランス入植者がカナダに持ち込んだ音楽伝統が、ケベックで独自に発展したもの。ヨーロッパとの交易が途絶えると、ケベックのコミュニティは独自のスタイルを磨き続けた。20世紀のフォークリバイバル以前は、主に農村部や居酒屋でのダンス音楽として機能していた。フランスカナダ人のアイデンティティ確立に、この音楽は不可欠な役割を果たしている。

聴きどころ

バイオリンのビブラートのかけ方がケベック・スタイルの特徴。弓の使い方が、古い技法を守りながら、地域的な変奏を加えている。足踏みのリズムパターンも地域によって異なり、その多様性を聴き比べるのも楽しい。歌詞の内容(農村生活、恋愛、冒険譚)も、コミュニティの価値観を反映している。

発展

1970年代のラ・ボトィン・スウランテ、1990年代以降のラ・ヴァヴラージュが世代を作り、ケベック音楽の代表として国際フォーク・フェスティバルで活躍する。2010年代にはハードコア・フォーク、ケベック語ヒップホップとも交差。

出来事

  • 1880: 初の口述音楽採譜
  • 1960: ケベック静かな革命
  • 1973: ラ・ボトィン・スウランテ結成
  • 2014: ケベック・トラッド・フェスティバル

派生・影響

ブルターニュ・フォーク、ケイジャン、米国オールドタイム、現代ワールド・フォークと交差。

音楽的特徴

楽器フィドル、ボタン式アコーディオン、声、足踏み

リズム高速2/4と6/8、足踏みリズム、口の音楽

代表アーティスト

  • La Bottine Sourianteカナダ · 1976年〜

代表曲

日本との関係

日本ではほぼ認知されていない。ただし、フォーク音楽全般への学術的関心が高い研究者の間では、ヨーロッパ系北米先住民音楽の重要事例として知られている。また、グローバル・フォーク・ムーブメントの一部として、マニアックな音楽リスナーに発見されることもある。

初めて聴くなら

La Bottine Souriante『Martin de la Chasse-galerie』(1990年)。シャス・ガレリー伝説(魔法の飛行カヌーの物語)を題材にした楽曲で、ケベック民俗の最もロマンティックな側面が表現されている。仲間との宴会時や、夕方のリラックスタイムに聴くのが最適。

豆知識

『シャス・ガレリー』はケベック民俗文学の中でも最も有名な伝説で、フランス・ケベック間の霊的な結合を象徴している。20世紀のケベック・ナショナリズムの高まりとともに、この伝説と音楽は文化的な誇りの対象となった。音楽学者はこの地域のフィドル技法を『フレンチ・カナディアン・バイオリン』と区別し、独自の伝統として認識している。

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