プレインチャント
中世西方教会で歌われた単声・無伴奏の聖歌の総称で、西洋音楽の最古層に位置する。
どんな音か
生まれた背景
聴きどころ
和声やリズムの変化を期待せず、言葉の抑揚と旋律の弧を追う。音が高くなる場所は意味や祈りの焦点と関係し、終止では空間が静かに閉じる。残響のある教会録音では、声の輪郭が空間へ溶ける感覚も重要である。短い聖歌から入り、同じ旋法の色合いを聴き比べると耳が慣れてくる。
発展
9世紀の聖ガレン修道院などでネウマ譜が発展し、11世紀のグイード・ダレッツォによって四線譜とソルミゼーションが体系化された。13世紀には聖歌の旋律をもとに多声音楽(オルガヌム)が積み重ねられ、ノートルダム楽派へとつながる。ルネサンス以降は印刷譜による標準化が進み、19世紀のソレーム修道院による校訂で現代の歌い方が確立した。第二バチカン公会議以降は典礼改革で使用機会が縮小したが、瞑想的音楽として再評価されている。
出来事
- 590: 教皇グレゴリウス1世即位、聖歌伝統の整備が伝説化
- 795: カール大帝のもとローマ式典礼の統一が進行
- 1025年頃: グイード・ダレッツォ「ミクロログス」、四線譜とソルミゼーション
- 1903: 教皇ピウス10世「自発教令」によりグレゴリオ聖歌を典礼の規範に
- 1994: ベネディクト会修道士「Chant」が世界的ヒット
派生・影響
オルガヌム、コンドゥクトゥス、モテットなど中世多声音楽の母体となり、ルネサンスのミサ曲・モテットでも定旋律として用いられた。20世紀以降はホーリー・ミニマリズムや現代宗教音楽の精神的源泉として参照され、Enigmaなどポピュラー音楽でもサンプリングされた。
音楽的特徴
楽器無伴奏の男声斉唱
リズム自由リズム、ラテン語、教会旋法
代表アーティスト
- レオニヌス
代表曲
- Dies Irae (1250)
- Te Deum laudamus (800)
- Veni Creator Spiritus (900)
- Kyrie XI 'Orbis factor' (1000)
- Salve Regina (1100)
日本との関係
初めて聴くなら
入口は「Salve Regina」。旋律の動きが比較的つかみやすく、祈りの歌としての性格も分かる。荘厳さを知るなら「Te Deum laudamus」、死者のための典礼的な重みを聴くなら「Dies Irae」がよい。「Kyrie XI 'Orbis factor'」では反復される祈りの言葉に耳を置きたい。
