宗教・霊歌

アンブロジオ聖歌

Ambrosian Chant

ミラノ / イタリア / 南欧 · 380年〜

別名: Cantus ambrosianus

北イタリア・ミラノ大司教区で伝承されるラテン典礼聖歌。ミラノ典礼に固有の独自伝統。

どんな音か

アンブロジオ聖歌グレゴリオ聖歌より複雑な旋律を持つ。リズムは拍子的というより、ラテン語のプロソディ(言葉のリズム)に従う。女性合唱団と男性合唱団が交互に歌うアンティフォナル様式を用い、その掛け合いで時間的な奥行きが生成される。音程体系はグレゴリオと異なり、より古い様式を保有している。全体として、初期キリスト教時代の音響が色濃く保存されているはずである。

生まれた背景

4世紀のミラノ大司教アンブロジウスの時代に起源し、その後ミラノ大司教区の独自の典礼伝統として保有されてきた。ローマ・カトリック主流派がグレゴリオ聖歌を採用した後も、ミラノ典礼はアンブロジオ聖歌を保存し続けた。第二次世界大戦後、典礼改革の波のなかでも、ミラノ大司教区は伝統を守り抜き、現在に至っている。

聴きどころ

グレゴリオ聖歌との音程体系の違い。男女合唱団の掛け合いのタイミング。ラテン語の言葉のリズムと旋律の関係。全体の時間感、特に沈黙がどう機能するか。

発展

中世を通じてミラノ周辺で写本に記録され、ローマ化の圧力を受けつつも独立を保った。トリエント公会議でも200年以上の歴史を持つ典礼として例外的に存続が認められた。20世紀以降ミラノ大司教区の聖歌学者により楽譜が整備され、第2バチカン公会議後の改革でも独自典礼として復興された。

出来事

  • 386: アンブロジウス、ミラノで対唱詩篇歌を導入
  • 1576: カルロ・ボッロメオ、典礼書を再編集
  • 1622: ローマでアンブロジオ典礼の存続が公式に確認される
  • 1935: ミラノ司教区が現代版アンブロジオ・グラドゥアルを刊行

派生・影響

アンブロジオの讃美歌詩形(イアンブス2歩格四行詩)はラテン讃美歌の基本形となり、中世から近代までヨーロッパ讃美歌全般のひな型となった。

音楽的特徴

楽器男声斉唱、会衆斉唱

リズム自由リズム、独自旋法、対唱形式

代表アーティスト

  • Cappella Musicale del Duomo di Milanoイタリア · 1402年〜

代表曲

  • Cantus Ambrosianus: Te DeumCappella Musicale del Duomo di Milano

日本との関係

アンブロジオ聖歌日本では学術的な関心の対象に限定されている。ヨーロッパ中世音楽への関心も、日本ではルネサンス以降に比べて薄く、古代典礼音楽までの認知度は極めて低い。

初めて聴くなら

『Cantus Ambrosianus: Te Deum』Cappella Musicale del Duomo di Milano。ミラノ大聖堂付属合唱団による演奏で、最高の音質と解釈を期待できる。静寂と瞑想の時間を確保して聴くことが重要。

豆知識

Cappella Musicale del Duomo di Milanoはミラノ大聖堂に属する由緒ある合唱団で、500年以上の歴史を持つ。彼らの録音はDDD方式(デジタル録音)のものが多く、音質は比較的良好である。アンブロジオ聖歌の楽譜は限定的にしか出版されておらず、学術的価値は極めて高い。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図380年代750年代アンブロジオ聖歌アンブロジオ聖歌グレゴリオ聖歌グレゴリオ聖歌凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
アンブロジオ聖歌を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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