ハーディングフェレ・スロット
ノルウェーの共鳴弦付フィドルによる舞踏曲。
どんな音か
フィドル(ノルウェー語でハーディングフェレ)は、通常のバイオリンに共鳴弦を加えたもので、その音色は独特で、倍音が豊かである。リズムは 2/4 拍子が基本で、スコットランドやアイルランドのフィドル音楽よりもテンポが遅く、瞑想的。メロディは旋法的で、ノルウェーの自然風景を思い起こさせる。楽器は一本で、ダンスの伴奏から室内演奏まで、様々なコンテキストで演奏される。スタジオ録音では、楽器の音色の豊かさが活かされることが多い。
生まれた背景
ハーディングフェレはノルウェーのスロット(舞踏曲)を演奏するために発展した楽器で、その形成時期は 17〜18 世紀と考えられている。共鳴弦を備えることで、独特の倍音が生まれ、それがノルウェー民族音楽の特徴的な音色となった。19 世紀から 20 世紀にかけて、ハーディングフェレの演奏家は高い社会的地位を獲得し、ノルウェーの民族音楽シンボルとなった。
聴きどころ
ハーディングフェレの倍音の豊かさ。共鳴弦が作り出す独特のサウンド・テクスチャ。メロディラインの流暢さと、装飾音の扱い。スロット(舞踏曲)としてのリズムの正確性。楽器一本で全ての音域を表現する技巧。
発展
Myllarguten(1801-1872)が独奏芸術として確立。Edvard Griegが管弦楽作品にスロット主題を引用した。1923年のLandskappleiken大会で標準化が進む。
出来事
- 1651: Jaastad fiddle製作
- 1923: Landskappleiken大会開始
- 1903: Grieg『スロット』Op.72
- 2000s: Annbjørg Lien等で国際化
派生・影響
Griegピアノ曲集Op.72、現代のNordic Folkに直接影響。
音楽的特徴
楽器ハーディングフェレ(共鳴弦付フィドル)
リズム非対称3拍子(Springar)、2/4(Gangar)、Halling跳躍
代表アーティスト
- Myllarguten
- Annbjørg Lien
代表曲
Fanitullen — Myllarguten (1855)
Prillar — Annbjørg Lien (1994)
日本との関係
ハーディングフェレ・スロットが日本で知られるようになったのは、北欧民族音楽への関心が高まった 1990 年代以降。ノルウェーの民族音楽として、やや学術的な関心で参照されることが多い。スコットランドやアイルランドのフィドル音楽に比べ、認知度は限定的。
初めて聴くなら
Myllarguten『Fanitullen』(1855)。ハーディングフェレ・スロット史上の最高傑作の一つ。楽器の音色のすべてが詰まっており、初めてのハーディングフェレ体験に最適。より現代的な解釈なら、Annbjørg Lien『Prillar』(1994)。ハーディングフェレの可能性を現代的に拡張した音。
