朝鮮(北)歌謡
国家に奉仕する北朝鮮の革命歌謡とシンセ歌謡。
どんな音か
指導者・党・祖国を称える革命歌謡を核に、1980年代以降はシンセサイザー主体の電子歌謡へ広がった国家音楽。澄んだ高音のソプラノや女性ボーカル、整然とした和声と明快な旋律が特徴で、メッセージは一貫して体制礼賛にある。ポチョンボのシンセ・ポップから近年のモランボン楽団のロック調まで、装いは時代に合わせて変わる。
生まれた背景
1948年の建国以降、音楽は国家の宣伝・教育の装置として制度化された。1980年代に金正日の指導で旺載山軽音楽団やポチョンボ電子楽団が結成され、シンセと西洋ポップの語法を取り入れた「軽音楽」が公認された。2012年には金正恩体制下でモランボン楽団が登場し、より現代的なステージを見せた。
聴きどころ
発展
ポチョンボ電子楽団は『휘파람(口笛)』など親しみやすい歌謡を量産し、国外でも知られた。モランボン楽団は弦楽器とロックバンド編成、派手な照明を備えたが、その役割は依然として体制の正当化にある。
出来事
- 1948年: 朝鮮民主主義人民共和国建国、音楽の国家管理が始まる。
- 1985年: ポチョンボ電子楽団が結成される。
- 2012年: 金正恩体制下でモランボン楽団がデビューする。
派生・影響
ソビエト大衆歌と中国の紅歌を共通の祖とする社会主義圏歌謡の一系統。韓国歌謡とは政治体制の違いから別個の発展を遂げた。
音楽的特徴
楽器ソプラノ独唱、女性ボーカル、シンセサイザー、弦楽器、ロックバンド編成
リズム明快な長調旋律、整然とした和声、シンセ主導の伴奏、行進調も
代表アーティスト
- Wangjaesan Light Music Band
- Pochonbo Electronic Ensemble
- Moranbong Band
代表曲
휘파람 (Whistle) — Pochonbo Electronic Ensemble (1990)
반갑습니다 (Nice to Meet You) — Pochonbo Electronic Ensemble (1991)
당신이 없으면 조국도 없다 (Without You There Is No Motherland) — Moranbong Band (2012)
日本との関係
拉致問題や南北関係の報道で、北朝鮮の女性楽団の映像が日本でも繰り返し流れてきた。1990年代には『口笛』がそのキャッチーさからインターネット上で話題になり、政治色を離れて旋律だけが独り歩きしたこともある。
初めて聴くなら
ポチョンボ電子楽団『口笛(휘파람)』(1990)が最も親しみやすく、恋の歌のような体裁のシンセ歌謡。近年の様式を知るならモランボン楽団のデビュー曲を。
豆知識
『口笛』は本来は片思いを歌う恋愛歌として作られており、北朝鮮の国家音楽の中では珍しく政治色の薄い一曲として国外でも知られた。
