マオリ・ワイアタ
ニュージーランド先住民マオリの歌の伝統。
どんな音か
ワイアタは二声以上の和声を基本とし、特に低音のハーモニーが特徴的である。テンポはゆっくりから中程度で、一音を長く保つ傾向がある。ボーカルは力強く、感情が直接的に声に乗る。楽器伴奏がある場合、ギターやウクレレが使われ、ボーカルの線を支える。全体として、土地との繋がりと歴史への向き合いが音に刻まれている。
生まれた背景
ワイアタはマオリ民族の先接触期から存在し、儀式、恋愛、悲しみ、抗争などあらゆる生活場面で歌われてきた。ヨーロッパ系民族の到来と植民地化によって、マオリ文化は一時的に抑圧された。20世紀後半の先住民族権利運動のなかで、ワイアタは文化的復権のシンボルになり、学校教育でも教えられるようになった。
聴きどころ
複数の声がどのように重なるか、特に低音と高音の関係。一音から別の音へのポルタメント的な滑らかさ。歌詞の言葉の重さ、その言葉が持つ歴史的背景。アコースティック楽器の響き。
発展
1970年代からマオリ・ルネサンスが起こり、教育(コハンガ・レオ=幼児マオリ語園)とテレビでマオリ音楽が再評価された。ヒラリーニ・モフィット・ホエティラ・キリスティーン・カラ・テ・キハイ・ハミルトンらが継承を担い、Maisey Rikaら現代マオリ・ポップが世界に広まる。
出来事
- 13世紀: マオリのアオテアロア到達。
- 1840年: ワイタンギ条約。
- 1972年: マオリ言語週間制定。
- 1985年: コハンガ・レオ運動。
- 2017年: マオリ語週間が全国行事化。
派生・影響
現代ニュージーランド音楽(ヒップホップ・レゲエとの融合)、ポリネシア音楽連帯、ニュージーランド国家アイデンティティの中核を提供する。
音楽的特徴
楽器声、プトルゥ(伝統横笛)、コアウアウ(縦笛)、パハカ(打棒)
リズムワイアタ古典詠唱の自由律、ハカの強拍、儀礼的繰り返し
代表アーティスト
- Hirini Melbourne
- Moana Maniapoto
代表曲
Pokarekare Ana — Moana Maniapoto (1998)
日本との関係
初めて聴くなら
『Pokarekare Ana』モアナ・マニアポト(1998年)。これはマオリ音楽の中でも最も有名な曲の一つで、初心者向けの入り口としてふさわしい。特にコーラス部分の和声の厚さが印象的。
豆知識
Pokarekare Anaは1926年に作られた曲で、1990年代の再録音版は高い音質で製作された。モアナ・マニアポトはマオリ音楽のアンバサダー的存在で、国際的な活動も行っている。ワイアタの歌詞はマオリ語で、その言語自体もニュージーランド当局による保護対象になっている。
