WorldMusic

伝統・民族

アボリジニ音楽

Australian Aboriginal Music

オーストラリア / オセアニア · -50000年〜

別名: Songlines / ディジュリドゥ音楽

オーストラリア先住民アボリジニの数万年の歴史を持つ音楽伝統。

まずはここから

ひとことで言うとオーストラリア先住民アボリジニの数万年の歴史を持つ音楽伝統。

まずはこの曲からYothu YindiTreaty ▶ YouTube

代表的な人Yothu Yindi

どんな音か

オーストラリア先住民音楽の中心にあるのは「ソングライン」と呼ばれる、口伝で継承される歌の系譜だ。ソングラインは大陸を縦横に走る「歌の道」で、それぞれの氏族(クラン)が自分たちの土地の地形、水源、聖地、祖先の物語を歌の形で記憶している。単なる歌ではなく、土地の権利と一体化した口承法体系そのもので、1992年のMabo判決以降のネイティブ・タイトル(先住民土地権)請求では、これらのソングが法廷での証拠として実際に採用される。楽器はディジュリドゥ(北部アーネムランドの伝統では男性専用の低音管楽器、円環呼吸で連続音を出す)、クラップスティック(木製の打楽器)、そして手拍子と足踏みが基本で、これに複雑なリズムの朗誦(コロボリー)が重なる。

聴きどころ

ディジュリドゥの連続音を聴くとき、単なる持続音ではなく、奏者の口の中の形状変化(舌の位置、頬の膨らみ)による倍音の変化を追うのが本当の聴き方だ。上手な奏者は円環呼吸(鼻から吸いながら頬に貯めた空気で吹き続ける)で数分間途切れず、その間に鳥の鳴き声、犬の吠え声、走る動物の足音を模写する。ヨトゥ・インディの『Treaty』(1991)は、アーネムランドの伝統歌唱スタイルであるマニカイ(男性2-3人の重層朗誦)を、ロック・バンドの4/4リズムに重ねた歴史的な瞬間だ。Geoffrey Gurrumul Yunupinguの盲目のギター弾き語りは、Yolŋu Mathaのやわらかな母音が英語より丸く共鳴する声質を持つ。

初めて聴くなら

入り口はヨトゥ・インディ『Treaty』(1991)、伝統歌唱とロックの融合の決定形。次にGeoffrey Gurrumul Yunupingu『Wiyathul』(2008)、盲目の天才によるYolŋu Mathaの静謐なバラード。Baker Boy『Marryuna』(2017)はYolŋu Mathaラップの現代形。伝統的なディジュリドゥ独奏を聴くならDavid Hudson『Guardians of the Reef』(1997)。深夜、あるいは早朝、自然の中で聴くのが本来の作法に一番近い。

代表アーティスト

  • Yothu Yindiオーストラリア · 1986年〜2013
  • Geoffrey Gurrumul Yunupinguオーストラリア · 1989年〜2017

代表曲

生まれた背景

オーストラリア先住民の音楽伝統は世界最古の連続する音楽伝統の一つで、DNA証拠と考古学から少なくとも6万5000年前にはこの大陸で歌われていた。歌は「Dreamtime」(トゥジュクルパ、あるいはアルチェリンガと呼ばれる)、すなわち「祖先の時代」に世界が形作られた記憶の器で、この時代は過去のある時点ではなく、いまも並行して存在する時間層と考えられている。

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1788年の英国植民開始後、19世紀の虐殺と20世紀の「盗まれた世代」政策(1910-70、混血の先住民の子供が親から強制隔離された)がこの伝統に致命的な打撃を与えたが、北部準州(ノーザン・テリトリー)や西豪州の遠隔地では家庭内での継承が続き、1980年代以降のヨトゥ・インディやWarumpi Bandの登場で世界的な認知が広がった。

音楽的特徴の詳細

楽器ディジュリドゥ、クラップスティック(ビルマ)、声、地・体の打音

リズム循環呼吸ドローン、ソングラインの地理対応詞章、部族別音律

発展

20世紀後半、アボリジニ文化復興運動の中で都市的アボリジニ音楽家(ヨートゥ・インディ・アーチー・ローチ・ジェフリー・ガールラ・ユヌピングら)が世界的に活躍した。ヨートゥ・インディ『トリーティ』(1991年)はアボリジニ権利運動の象徴歌となった。

出来事

  • 古代: ソングライン文化の起源(5万年前)。
  • 1971年: アボリジニ・テント大使館設立。
  • 1991年: ヨートゥ・インディ『トリーティ』。
  • 2000年: シドニー五輪開会式でアボリジニ音楽。
  • 2008年: ラッド首相による先住民への謝罪。

派生・影響

現代ワールドミュージック・ロック・実験音楽との融合、ディジュリドゥ国際奏者ジェノ・チラビとの音楽交流、世界の先住民連帯運動のシンボルとなる。

日本との関係

日本での先住民音楽認知の決定的な入口は2000年シドニー五輪開会式の大規模な先住民パフォーマンスで、日本の視聴者にアボリジニ音楽の存在感が刻まれた。以降、坂本龍一のプロジェクトへの参加(Yothu Yindiは1998年『TRAVELING』ツアーの一部で坂本と共演した記録がある)、そして2019年Baker Boyのフジロック出演が層の拡張を続けている。日本アイヌ音楽の状況(OKI DUB AINU BAND、Marewrew)と構造的に似ていて、両者を並べて論じる文化人類学者も少なくない。土地権と歌が一体化している点、そして絶滅危機に瀕した言語の音楽化という点で、日本の音楽人にとっても重要な参照点だ。

豆知識

ディジュリドゥの伝統的な製作は、シロアリに食われて中が空洞になったユーカリの枝を選び出すところから始まる。アーネムランドの伝統では、女性はディジュリドゥの演奏に触れないという厳格な禁忌があるが、これは全豪共通のルールではなく、地域や氏族(クラン)によって異なる。

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ヨトゥ・インディの『Treaty』(1991)は、1988年のBarunga Festivalで当時の労働党政権ボブ・ホーク首相が「先住民との条約を結ぶ」と約束したことが実現しなかったことへの直接の政治的批判だった。曲は全豪11位、翌年ダンス・リミックス版でヨーロッパでもヒットし、先住民音楽が世界市場で成功した最初の重要例となった。

影響・派生で結ばれたジャンル

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