アボリジニ音楽
オーストラリア先住民アボリジニの数万年の歴史を持つ音楽伝統。
どんな音か
ディジェリドゥーの低い唸り音が空間を占め、その上に複数の声が重なる。リズムは一定のビートというより、呼吸と物語の進行に従う。歌詞はダンスと一体で、身体の動き、足の踏み方、手の形によって意味が決まる。楽器の種類は地域によって多様で、ディジェリドゥーだけでなく、クラップスティック、スティック、声を打つパーカッションが混在する。録音には環境音や掛け声が混ざり、スタジオ処理と儀式の現地録音の両方が存在する。
生まれた背景
聴きどころ
ディジェリドゥーの円形呼吸法。息が途切れないこの技法が実現する、波のような連続感。複数の声の重ね方と、意図的な沈黙・空白。歌詞の意味より、歌唱の儀式的な側面。儀式の録音では、周囲の掛け声や足音も音楽の一部として機能している点。
発展
20世紀後半、アボリジニ文化復興運動の中で都市的アボリジニ音楽家(ヨートゥ・インディ・アーチー・ローチ・ジェフリー・ガールラ・ユヌピングら)が世界的に活躍した。ヨートゥ・インディ『トリーティ』(1991年)はアボリジニ権利運動の象徴歌となった。
出来事
- 古代: ソングライン文化の起源(5万年前)。
- 1971年: アボリジニ・テント大使館設立。
- 1991年: ヨートゥ・インディ『トリーティ』。
- 2000年: シドニー五輪開会式でアボリジニ音楽。
- 2008年: ラッド首相による先住民への謝罪。
派生・影響
現代ワールドミュージック・ロック・実験音楽との融合、ディジュリドゥ国際奏者ジェノ・チラビとの音楽交流、世界の先住民連帯運動のシンボルとなる。
音楽的特徴
楽器ディジュリドゥ、クラップスティック(ビルマ)、声、地・体の打音
リズム循環呼吸ドローン、ソングラインの地理対応詞章、部族別音律
代表アーティスト
- Yothu Yindi
- Geoffrey Gurrumul Yunupingu
代表曲
- Treaty — Yothu Yindi (1991)
- Wiyathul — Geoffrey Gurrumul Yunupingu (2008)
日本との関係
初めて聴くなら
Yothu Yindi『Treaty』を昼間に聴く。政治性と音楽性が一体の、1990年代の国際先住民運動の象徴的な一曲。儀礼的な深さを求めるなら、Geoffrey Gurrumul Yunupingu『Wiyathul』の現地録音版。複数のアボリジニ民族の声が重なり、ディジェリドゥーの共鳴が身体に響く。
豆知識
ディジェリドゥーはユーカリの枝を白蟻が食べて空洞化させたものを楽器化したもので、地域によって『ユーキ』『ユルク』など異なる名前がある。国際的には一般名詞化したが、アボリジニ各民族の間でも呼び方が異なり、楽器の作られ方、タブーも異なる。西洋人による『ディジェリドゥー音楽』として商品化されたものの多くは、儀式的背景を失った変種である。
