伝統・民族

アボリジニ音楽

Australian Aboriginal Music

オーストラリア / オセアニア · -50000年〜

別名: Songlines / ディジュリドゥ音楽

オーストラリア先住民アボリジニの数万年の歴史を持つ音楽伝統。

どんな音か

ディジェリドゥーの低い唸り音が空間を占め、その上に複数の声が重なる。リズムは一定のビートというより、呼吸と物語の進行に従う。歌詞はダンスと一体で、身体の動き、足の踏み方、手の形によって意味が決まる。楽器の種類は地域によって多様で、ディジェリドゥーだけでなく、クラップスティック、スティック、声を打つパーカッションが混在する。録音には環境音や掛け声が混ざり、スタジオ処理と儀式の現地録音の両方が存在する。

生まれた背景

オーストラリア先住民の音楽伝統は5万年以上前にさかのぼるとされ、世界的に見ても最古級。アボリジニの精神世界では音楽は儀式の中核で、土地との関係、祖先との交信、季節の変化を音に変換する。部族ごと、地域ごとに異なる伝統があり、統一的な「アボリジニ音楽」は存在しない。20世紀後半の先住民権運動とともに、若い世代による創作と伝統の融合が進んだ。

聴きどころ

ディジェリドゥーの円形呼吸法。息が途切れないこの技法が実現する、波のような連続感。複数の声の重ね方と、意図的な沈黙・空白。歌詞の意味より、歌唱の儀式的な側面。儀式の録音では、周囲の掛け声や足音も音楽の一部として機能している点。

発展

20世紀後半、アボリジニ文化復興運動の中で都市的アボリジニ音楽家(ヨートゥ・インディ・アーチー・ローチ・ジェフリー・ガールラ・ユヌピングら)が世界的に活躍した。ヨートゥ・インディ『トリーティ』(1991年)はアボリジニ権利運動の象徴歌となった。

出来事

  • 古代: ソングライン文化の起源(5万年前)。
  • 1971年: アボリジニ・テント大使館設立。
  • 1991年: ヨートゥ・インディ『トリーティ』。
  • 2000年: シドニー五輪開会式でアボリジニ音楽。
  • 2008年: ラッド首相による先住民への謝罪。

派生・影響

現代ワールドミュージック・ロック・実験音楽との融合、ディジュリドゥ国際奏者ジェノ・チラビとの音楽交流、世界の先住民連帯運動のシンボルとなる。

音楽的特徴

楽器ディジュリドゥ、クラップスティック(ビルマ)、声、地・体の打音

リズム循環呼吸ドローン、ソングラインの地理対応詞章、部族別音律

代表アーティスト

  • Yothu Yindiオーストラリア · 1986年〜2013
  • Geoffrey Gurrumul Yunupinguオーストラリア · 1989年〜2017

代表曲

日本との関係

1991年の Yothu Yindi『Treaty』が日本のラジオで放送され、国際的なアボリジニ音楽への関心を喚起した。その後、Geoffrey Gurrumul Yunupingu のような現代アボリジニ・アーティストの作品が少数ながら日本でも流通するようになった。しかし、主流のポップミュージック市場では位置づけが定まらず、ワールドミュージック・リスナーや音楽学関心層の知識に留まっている。

初めて聴くなら

Yothu Yindi『Treaty』を昼間に聴く。政治性と音楽性が一体の、1990年代の国際先住民運動の象徴的な一曲。儀礼的な深さを求めるなら、Geoffrey Gurrumul Yunupingu『Wiyathul』の現地録音版。複数のアボリジニ民族の声が重なり、ディジェリドゥーの共鳴が身体に響く。

豆知識

ディジェリドゥーはユーカリの枝を白蟻が食べて空洞化させたものを楽器化したもので、地域によって『ユーキ』『ユルク』など異なる名前がある。国際的には一般名詞化したが、アボリジニ各民族の間でも呼び方が異なり、楽器の作られ方、タブーも異なる。西洋人による『ディジェリドゥー音楽』として商品化されたものの多くは、儀式的背景を失った変種である。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図-50000年代1300年代アボリジニ音楽アボリジニ音楽マオリ・ワイアタマオリ・ワイアタ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
アボリジニ音楽を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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