伝統・民族

ハカ

Haka

ニュージーランド / オセアニア · 1500年〜

マオリの戦士的踊り歌。集団で力強く演じる詠唱舞踊。

どんな音か

ハカは歌と叫びとダンスが分割できない形式で成立している。地を踏み鳴らす足拍子(itū)、腿を叩く(waewae takahia)、舌を突き出す(whetero)、目を大きく開く(pūkana)——これらはすべて音と動きが同時に出る「声の身体」だ。歌詞はマオリ語で、言葉の意味と音の激しさが一体として機能する。「カ・マテ(Ka Mate)」はもっとも広く知られるハカで、19世紀初頭の首長テ・ラウパラハが敵から逃れたときの詩が起源だ。音楽的な伴奏楽器は使わず、声と打撃音だけで場の空気を変える。

生まれた背景

マオリはポリネシア系の民族で、13〜14世紀ごろにニュージーランドに渡来したとされる。ハカは戦士の士気を高める戦前の儀式から始まったとも、来訪者への挨拶・歓迎の儀式でもあったともされ、機能は文脈によって変化した。19世紀のイギリスによる植民地化とマオリ戦争(1845〜72年)を経て、ハカは抵抗と誇りの表現として意味を強めた。20世紀後半のマオリ文化復興運動のなかで、ハカは学校教育や公的行事に積極的に取り込まれていった。

聴きどころ

「カ・マテ」を聴くときは、グループ全員が一斉に出す声のタイミングがどれだけ正確かを意識するといい。個人の声ではなく集団の声が「ひとつの声」として聞こえる精度が高いほど、ハカとしての完成度が高いとされる。また、足踏みの音が床・地面に吸収されずに部屋に響く感触は音楽ホールの録音より屋外録音のほうが分かりやすい。

発展

1888〜89年のニュージーランド代表ラグビー・チーム遠征で初の海外披露があり、20世紀を通じてオールブラックスのトレードマークとなった。2005年に新しい「カパ・オ・パンゴ」(黒のチームの意)も制定された。マオリ文化復興運動でハカは民族尊厳の象徴として再評価された。

出来事

  • 1820年代: テ・ラウパラハ『カ・マテ』成立。
  • 1888年: ニュージーランド代表海外遠征で初披露。
  • 1972年: マオリ語週間でハカ復活。
  • 2005年: 『カパ・オ・パンゴ』制定。
  • 2015年: ラグビーW杯でハカ世界注目。

派生・影響

ニュージーランド国民的アイデンティティの象徴、ポリネシア戦士舞踊群(サモア・シヴァ・タウ、トンガ・シパ・タウ等)との比較対象、世界のスポーツ前演舞文化に影響を与えた。

音楽的特徴

楽器声、体打音(胸・腕・腿)、足踏み

リズム強く揃ったユニゾン詠唱、所作と詠唱の同期、戦闘的・儀礼的繰り返し

代表アーティスト

  • Hirini Melbourneニュージーランド · 1980年〜2003

代表曲

日本との関係

ニュージーランド代表のオールブラックス(ラグビー)がテストマッチ前に行うハカは、日本でもラグビーファンを中心に広く認知されている。2019年のラグビーワールドカップが日本開催だったこともあり、「ハカ」という名前が急速に日本に広まった。Hirini Melbourneはマオリ音楽の研究者・演奏者として知られ、伝統楽器の録音に取り組んだ。

初めて聴くなら

オールブラックスの試合前ハカ(「カ・マテ」または「カパ・オ・パンゴ」)の映像を音と一緒に体験するのが最初の入口として最も直感的だ。映像なしの音だけでは伝わりにくい表現なので、動画で見ることをすすめる。Hirini Melbourneのアルバムではマオリ楽器(purerewā、pūtōrino)との組み合わせも聴けて、ハカの外にあるマオリ音楽の世界も広がる。

豆知識

「カ・マテ」を作ったとされる首長テ・ラウパラハ(1767〜1849年頃)の子孫は現在も存命で、2020年代にニュージーランドのラグビー協会との間で「カ・マテ」の著作権的な帰属に関する交渉が行われた。先住民の伝統的表現の権利という現代的な問題がハカをめぐって浮上しており、国際的にも注目されている。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1300年代1500年代ハカハカマオリ・ワイアタマオリ・ワイアタ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ハカを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

ハカ の系譜全体図(多段)を見る

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