マネレ
ルーマニアのバルカン系都市ポップ。
どんな音か
マネレはシンセサイザーのリード音が前面に出て、キーボードが東地中海音楽の音階(ヒジャーズや二重増音程を含む音型)で旋律を弾く。リズムはチョチェク(バルカン系ロマの舞踊リズム)を電子ドラムで再現したもので、2拍子の強拍が強調され踊りやすい。歌い手はファルセットと地声の切り替えを多用し、感情の最高点で裏声が混じる。歌詞はお金、愛、パーティー、裏切り者への呪いがテーマになることが多く、街の口語ルーマニア語で書かれる。音量は大きく、結婚式のスピーカーから流れることを前提にした「会場を満たす」ミックス。
生まれた背景
1990年の共産主義体制崩壊後、ルーマニアではメディアと市場が一気に自由化した。それまで国営メディアで抑圧されていたバルカン系ロマ(チガニ)の音楽が、カセットテープの違法コピーと屋台販売を通じて急速に普及した。トルコやブルガリアの「チャルガ」音楽の影響を受けながら、ルーマニア語の歌詞と電子楽器によって独自のスタイルを確立した。Adrian Copilul Minune(アドリアン・コピルル・ミヌネ)やNicolae Guță(ニコラエ・グツァ)は1990年代後半から大量にリリースし、特に農村部と都市部の移民労働者の間で絶大な人気を持った。
聴きどころ
Adrian Copilul Minune「De Ce Mă Minți」(2002)では、イントロのシンセリードが東洋的な音階で動くのが最初の特徴。ヴォーカルが入ると旋律よりリズムへの密着感が強く、踊りやすさが優先されていることが分かる。Nicolae Guță「Saraiman」(2003)はテンポが速く、結婚式の興奮が音に直接出ている。コーラスとヴァースの境目がほとんどなく、曲全体が同じ熱量で推進する。
発展
Nicolae Guță、Adrian Minuneらがスター化。2000年代にはYouTubeを通じ国際拡散。Manele 2.0世代がEDMやTrapと融合させ進化中。
出来事
- 1989: ルーマニア革命
- 1995: Adrian Copilul Minune登場
- 2000s: YouTube拡散
- 2015: Manele 2.0世代
派生・影響
ブルガリアChalga、セルビアTurbo-Folk、ギリシャSkyladikoと姉妹関係。
音楽的特徴
楽器シンセサイザー、ダラブッカ、ヴァイオリン、声
リズム9/8 Karsilamasや4/4のバルカン・ビート、メリスマ歌唱
代表アーティスト
- Nicolae Guță
- Adrian Copilul Minune
代表曲
- Daca Tu Ai Sti — Nicolae Guță (2008)
Ai Frumusete Ai Bani — Adrian Copilul Minune (2008)
Asa Eu, Asa Tu — Adrian Copilul Minune (2010)
De Ce Mă Minți — Adrian Copilul Minune (2002)
Sa Te Sarut Iubirea Mea — Nicolae Guță (2003)
Saraiman — Nicolae Guță (2003)
日本との関係
初めて聴くなら
まず大音量で聴いてほしい——デスクトップのスピーカーより、イヤホンをフルボリュームに近い状態で。Adrian Copilul Minune「Ai Frumusete Ai Bani」(2008)は旋律が分かりやすく、マネレの基本的な音像を短時間で把握できる。ルーマニアの結婚式映像と組み合わせて見ると、この音楽がどういう空間で機能するかが一気に分かる。
豆知識
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- エレクトロニックルーマニアン・ミニマル
