古典

南管

Nanguan

福建省泉州 / 中国 / 東アジア · 900年〜

別名: Nanyin / 南音 / 南楽

福建南部・台湾の閩南語による古代室内楽。1000年の歴史を持つ。

どんな音か

琵琶(南管用の小型版)、二弦(ひときわ細い胡弓)、洞簫(縦吹きの竹製フルート)、三弦(三味線の原型)、拍板(木の拍子木)の5種が基本楽器編成で、この組み合わせは「御前清奏」と呼ばれ数百年変わっていない。テンポは非常に遅く、息が長い旋律が最小限の装飾だけで引き延ばされる。洞簫の音は柔らかく、音の端が空気に溶けるような余韻があり、現代の録音でも残響を長くとることでこの質感が再現される。歌(曲)は閩南語(ミンナン語)で歌われ、中国語圏でも福建・台湾以外では理解できない方言だ。

生まれた背景

南管の正確な起源は明らかでないが、唐〜宋代(7〜13世紀)の宮廷音楽の流れを汲むとされる。その後、福建南部の商業都市・泉州を中心に「絃管」として発展し、台湾への移住とともに移民が音楽を運んだ。台湾では1600〜1700年代から南管の同好会組織「館閣(kuán-kak)」が作られ、現在も台南・彰化などで活動が続いている。漢唐楽府(Hantang Yuefu)は1983年に台湾で設立され、古典南管曲目の舞台公演と録音を精力的に行っている。

聴きどころ

「梅花操」は南管の代表的な器楽曲で、漢唐楽府の録音(1990年代)では洞簫がひとつの長音を吹き始めてからどれくらい時間をかけて次の音へ移るかを耳で追うとよい。音が変わるタイミングが予測できないほど緩やかで、時計の概念が消えるような感覚がある。次に琵琶の弦を弾く音の粒の細かさに注目すると、旋律の骨格と装飾の区別がつき始める。

発展

20世紀後半、漢唐楽府(南管楽団)の台北進出やパリ公演で国際的注目を集めた。台湾の漢唐楽府は梨園戯と組んだ舞台公演を行い、近年は呉素霞ら名歌手が録音活動を続けている。

出来事

  • 唐宋期: 宮廷音楽の福建定着。
  • 明清: 閩南華僑による海外伝播。
  • 1983年: 漢唐楽府結成。
  • 2009年: ユネスコ無形文化遺産代表一覧表に登録。
  • 2012年: 漢唐楽府パリ公演。

派生・影響

梨園戯・高甲戯など閩南系戯曲の音楽的基盤となり、台湾原住民・客家音楽との比較研究の対象となっている。

音楽的特徴

楽器洞簫、南琶(横抱き琵琶)、三弦、二弦、拍板

リズム極めて緩慢なテンポ、四空管・五空管などの管門(調)、拍板による節制

代表アーティスト

  • 漢唐楽府台湾 · 1983年〜

代表曲

日本との関係

沖縄の三線(さんしん)と南管三弦の系統的なつながりについては音楽学者の間で論じられており、琉球王国時代の中継貿易を通じた文化交流の一端が南管音楽にあるという見方がある。ただし日本本土での演奏・鑑賞機会はほとんどなく、民族音楽学の学術分野での知識に留まる。

初めて聴くなら

漢唐楽府の「梅花操」を夜、ヘッドフォンで聴くことを勧める。洞簫の音の輪郭が空気に滲む感覚は、スピーカーより耳に近い状態で聴いたほうがよく伝わる。長い旋律が一息で続く部分では、奏者の呼吸のタイミングを想像しながら追うと音楽の時間感覚に慣れてくる。

豆知識

台湾では南管を学ぶ子供向けの放課後プログラムが一部の小学校に設けられており、無形文化遺産の継承教育として行政が支援している。また欧州の古楽フェスティバルに招かれる機会も増えており、ヨーロッパの聴衆に「アジアの古楽」として紹介される文脈で注目される場面が増えている。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図900年代1550年代南管南管崑曲崑曲凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
南管を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

南管 の系譜全体図(多段)を見る

ジャンル一覧へ戻る