ラテン・カリブ

ホローポ

Joropo

ベネズエラ/コロンビア / アンデス · 1600年〜

ベネズエラ・コロンビア東部リャノ(草原)地帯の牧畜民の舞踊歌で、ハープ、クアトロ、マラカが疾走するリャネロ・サウンド。

どんな音か

ハープ(アルパ)が速い分散和音を弾き続け、その上にクアトロ(4弦のギターに近い楽器)が細かいリズム刻みを重ね、マラカス(マラカ)が両手でほぼ止まらないシェイクを続ける。3拍子と6拍子が交互に絡み合うヘミオラが基本リズムで、これが独特の「前のめりになるけど落ちない」疾走感を生む。歌声は高く、よく通り、広大な草原の風景を想わせる開放感がある。踊りでは、男性が足でリズムを刻み(サパテアード)、女性がスカートを翻しながら旋回する。

生まれた背景

ベネズエラとコロンビアにまたがるリャノ(オリノコ川流域の熱帯草原)は、スペイン植民地時代から牛の放牧で栄えた。ホローポはその牧畜民(リャネロ)の音楽として育ち、スペインの舞曲とアフリカのリズム、そして先住民の要素が17〜18世紀にかけて混合された。ベネズエラでは国民音楽として位置づけられ、独立運動の象徴とも結びついてきた歴史がある。

聴きどころ

クアトロのリズムが3拍子に聞こえる瞬間と6拍子に聞こえる瞬間を、あえて行ったり来たりしながら追う。ハープは低音弦と高音弦を使い分けて伴奏と旋律を同時にこなしており、そのうち低音の動きだけを拾うと、ベースラインとして独立した音楽に聞こえてくる。

発展

20世紀後半シモン・ディアスがハープを愛しまない伴奏で「ベセケラ」「カバルガタ」を国際化し、ベネズエラ国民音楽の代表格となった。コロンビア東部のリャノでも盛んで、両国共通の民族文化遺産。

出来事

  • 1882: 独立戦争で士気鼓舞
  • 1971: シモン・ディアス全盛
  • 2014: ホローポ・ジャズ・フェス
  • 2017: ユネスコ候補リスト

派生・影響

ファンダンゴ、現代ベネズエラ・ポップ、ラテン・ジャズと交差。

音楽的特徴

楽器リャネラ・ハープ、クアトロ、マラカ、ベース、声

リズム高速3/4と6/8の往復(エミオラ)、ザパテオ足踏み

代表アーティスト

  • Simón Díazベネズエラ · 1949年〜2014

代表曲

日本との関係

日本ではほとんど知られていない。ラテン音楽の文脈でサルサボサノヴァは親しまれているが、ホローポのような地域性の強い音楽が紹介される機会は稀だ。南米音楽を専門とする演奏家や研究者のあいだで言及される程度。

初めて聴くなら

シモン・ディアスの『Caballo Viejo』(1980年)は最も知られたホローポの曲のひとつで、歌声の伸びとハープの疾走感を同時に体験できる。昼間、音量を上げて聴くとリャノの開放感が出る。

豆知識

『Caballo Viejo』(老いた馬)の歌詞は、年老いた男性が若い女性に恋する内容で、ベネズエラとコロンビアで空前のヒットとなった。後にカリブ海全域でカバーされ、サルサや他のラテンジャンルにも編曲されている。ホローポはユネスコ無形文化遺産(2017年)に登録されている。

ジャンル一覧へ戻る