伝統・民族

メレ

Hawaiian Mele

ハワイ州 / アメリカ合衆国 / オセアニア · 500年〜

別名: Hawaiian Chant / Oli

ハワイ先住民の詠唱伝統。神々と土地と祖先を歌う神聖な歌。

どんな音か

メレ(mele)はハワイ語で「歌・詩」を意味し、特定のスタイルを指すのではなく、ハワイ先住民の音楽と詩の総称だ。その中でも儀礼的な詠唱(オリ、oli)は、楽器なしで声だけで行われる形式で、言葉のリズムと抑揚が音楽そのものになる。歌詞はハワイの神話・系譜・土地・自然現象を精密な比喩で詠み、祖先への称賛と神々への働きかけを兼ねる。Edith Kanakaʻoleは1970〜80年代のハワイアン・ルネサンスの中心にいたクム・フラ(フラの師匠)で、「Mele メレ」(1978)はオリの形式を現代に記録した重要な録音。

生まれた背景

ハワイ先住民はポリネシア系で、紀元前後から数百年の間にタヒチなどの島々から移住したとされる。文字を持たなかったため、系譜・歴史・宗教的知識はすべてメレによって口頭で伝承された。「メレ・イノア(名前の歌)」「メレ・フラ(フラに合わせる歌)」「メレ・カハアマニア(酋長を称える歌)」など用途によって区分がある。19世紀のキリスト教宣教師による文化圧力とアメリカ合衆国併合(1898年)以降、ハワイ語とメレは学校教育から排除された時期があった。1970年代のハワイアン・ルネサンスでEdith Kanakaʻoleらが中心になってハワイ語とオリの復興に取り組んだ。

聴きどころ

オリは旋律よりも言葉の音の連なりを聴くことが大切だ。ハワイ語は母音で終わる音節が多く(日本語と共通する特徴)、声が流れるような持続感を持つ。Edith Kanakaʻoleの詠唱は声量の抑制と放出が明確で、特定の単語で声が張る瞬間がある——そこがテキストとして強調される箇所だ。

発展

1970年代からハワイアン・ルネサンスが起こり、メレ・フラの伝統的形式が再評価された。エディス・カナカオレ・ペレ・ピロ・ケアラ・チンらクムフラ(フラの師匠)が継承を担い、現代メリー・モナーク・フェスティバル(年次フラ大会)で頂点を競う。

出来事

  • 古代: ポリネシア渡来とともに詠唱伝統開始。
  • 1820年: 宣教師到来で文化抑制。
  • 1898年: ハワイ王国併合。
  • 1971年: ハワイアン・ルネサンス。
  • 2008年: メリー・モナーク・フェスティバル国際的注目。

派生・影響

現代ハワイ音楽全般(スラックキー・ファルセット・ハパハオレ)の精神的源泉、ポリネシア音楽連帯運動の中核、世界の先住民詠唱との比較対象。

音楽的特徴

楽器声、イプ(瓢箪太鼓)、パフ(木製太鼓)、プイリ(竹割り)、ウリウリ(羽飾りガラガラ)

リズムオリ・コホロイ(古典詠唱)とオリ・カラオ(発声詠唱)、神聖詞章、フラとの一体性

代表アーティスト

  • Edith Kanakaʻoleアメリカ合衆国 · 1960年〜1979

代表曲

日本との関係

フラダンスは日本でも広く普及しており、スポーツクラブやカルチャーセンターのフラクラスは全国にある。フラを習う過程でハワイ語の歌詞と向き合う機会があるため、「メレ」という言葉はフラ関係者の間では知られている。しかし先住民の詠唱としてのオリ(楽器なしの独唱)は、日本のフラ文化の中では十分に紹介されていない。

初めて聴くなら

Edith Kanakaʻoleの「Mele メレ」(1978)は、楽器のない声だけの詠唱を静かな空間で聴くのが最初のすすめ方だ。歌詞の意味はハワイ語の辞書か翻訳注釈つきの資料(英語のライナーノーツ)を参照しながら聴くと、言葉と声の結びつきがより明確になる。

豆知識

ハワイ語の「Aloha aina(大地への愛)」という概念はメレを通じて世代を超えて伝えられてきた。土地の名前・風の名前・波の名前がメレの中に何百も記録されており、地理的・生態学的な知識がそのまま詩になっている。ハワイ大学では現在もハワイ語とメレの研究・保存プログラムが続けられており、2023年時点でハワイ語は「危機に瀕した言語」から「回復中の言語」に分類が変わりつつある。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図500年代1500年代1910年代メレメレタヒチ音楽タヒチ音楽ハパハオレハパハオレ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
メレを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

メレ の系譜全体図(多段)を見る

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