アスリ・イナン
マレー半島の伝統舞踊歌曲。アスリは緩やか、イナンは軽快。
どんな音か
マレーシア半島の伝統舞踊歌曲。『アスリ』は遅く優雅な様式で、ゆったりとした3拍子系のリズムで、女性的で繊細。『イナン』は速く軽快で、4拍子系のリズムで、より激動的。ボーカルは、現代マレー語とも異なる方言で、愛や日常の喜怒哀楽を歌う。楽器はドラムと弦楽器(スター等)で、シンプルだが、各楽器がリズムを丁寧に刻む。舞踊とセットで演奏されることが多く、音楽だけでの理解は限定的。
生まれた背景
聴きどころ
P. Ramleeの『Asli Selendang Mak Inang』では、伝統的な舞踊リズムと、映画音楽としてのオーケストレーションが融合。Asliの優雅さとInangの軽快さが同一曲内で対比される。ボーカルは情感的でありながら、リズムには厳密に従う。
発展
20世紀にはサロマ・P・ラムリーらが映画でアスリ・イナン歌曲を歌い、マレー大衆音楽の基盤を築いた。現代もマレー結婚式・国家行事で必須の音楽として継承されている。
出来事
- 16世紀: マレー宮廷音楽として成立。
- 1950年代: P・ラムリーの映画歌で大衆化。
- 1970年代: 国営マレー芸術団による保存。
- 1990年代: 国際アジア音楽フェスティバル参加。
- 2010年代: 若手アーティストによる現代化。
派生・影響
現代マレー・ポップ・ジョゲット(舞踊歌)・ザピン(アラブ系舞踊歌)などマレーシア大衆音楽の旋律的基盤を提供した。
音楽的特徴
楽器ガンブス、ヴァイオリン、ルバナ、アコーディオン、声
リズムアスリは6/8〜3/4の緩拍、イナンは2/4の中庸拍、マレー詩パントゥン
代表アーティスト
- P. Ramlee
- Saloma
代表曲
Asli Selendang Mak Inang — P. Ramlee (1956)
日本との関係
初めて聴くなら
P. Ramleeの『Asli Selendang Mak Inang』(1956年)。ボーカルと楽器のバランスが良く、伝統と映画化の融合が感じられやすい。舞踊の映像とともに視聴することで、理解が深まる。昼間のリラックス時間に聴くことを勧める。
豆知識
『Inang』という言葉は、マレー語で『お母さん』を意味するが、その理由は不確実。伝統舞踊での役割や家族的なテーマとの関連が推定されるが、学者の間でも確定していない。P. Ramleeはマレーシア映画の『父』と呼ばれ、彼の成功は東南アジアでの映画音楽と民族音楽の融合の先例となった。
