宗教・霊歌

グレゴリオ聖歌

Gregorian Chant

ヨーロッパ全域 / 西ヨーロッパ · 750年〜

別名: Plainchant / Cantus planus

ローマ・カトリック教会のラテン語典礼で歌われる単旋律の無伴奏聖歌。中世西方教会音楽の基層をなす。

概要

8つの教会旋法に基づき、ネウマ譜で記された自由リズムの旋律を男声斉唱で歌う。ミサ通常文・固有文・聖務日課を構成し、装飾の少ない朗誦的なシラビック様式から、長大な装飾を伴うメリスマ様式まで幅広い表現を持つ。修道院での祈祷の音楽として千年以上にわたり実践されてきた。

背景

古代ローマ典礼やガリア・ヒスパニア地方の聖歌、ユダヤ教シナゴーグの詠唱伝統が混淆して形成されたとされる。教皇グレゴリウス1世(在位590-604)による編纂伝承は後世の権威づけだが、フランク王国カロリング朝による典礼統一政策のなかで体系化が進んだ。神への奉献として「言葉の装い」を担う祈祷音楽であり、声と祈りの一致を理想とする神学的枠組みの中で実践される。修道院共同体の日常的な祈りの骨格を成し、西方キリスト教霊性の音響的な結晶でもある。

発展

9世紀以降フランク王国でネウマ譜が発達し、11世紀のグイド・ダレッツォによる四線譜と階名唱法でレパートリーが固定化された。中世盛期にはオルガヌムなど多声音楽の母胎となり、ノートルダム楽派以降の西洋ポリフォニーの礎を築いた。トリエント公会議(16世紀)で典礼書が標準化されたが、19世紀末ソレム修道院のドン・ゲランジェ、ドン・ポティエ、ドン・モクロー(モクロー)らによる古写本研究で旋律と自由リズム解釈が再生された。第2バチカン公会議(1962-65)により母語典礼が許容されてからは典礼での比重が低下したが、修道院や復古主義的潮流の中で生き続けている。

出来事

  • 590: 教皇グレゴリウス1世即位、伝承上のグレゴリオ聖歌体系化
  • 800: カロリング朝下でローマ典礼歌が西方教会標準となる
  • 1030頃: グイド・ダレッツォが四線譜と階名を整備
  • 1903: 教皇ピウス10世自発教令『Tra le sollecitudini』、聖歌の典礼での首位を再確認
  • 1962: 第2バチカン公会議開幕、母語典礼導入
  • 1994: アンソニー修道院盤『Chant』が世界的ヒット

派生・影響

西洋ポリフォニー音楽全体の母胎となり、ミサ曲・モテット・オルガン音楽の主題素材として近現代まで引用された。20世紀末には『カント』ブームでアンビエント音楽やニューエイジ系作品に取り入れられ、サンプリング素材としてもポピュラー音楽に広まった。

音楽的特徴

楽器男声斉唱(無伴奏)、稀にオルガン伴奏

リズム自由リズム、教会旋法、ネウマ譜、シラビック~メリスマティック

代表アーティスト

  • Hildegard von Bingenドイツ · 1140年〜1179
  • Choeur des Moines de l'Abbaye Saint-Pierre de Solesmesフランス · 1833年〜
  • Schola Hungaricaハンガリー · 1969年〜
  • Anonymous 4アメリカ合衆国 · 1986年〜2015

代表曲

関連ジャンル

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