モサラベ聖歌
イベリア半島の西ゴート時代に発展し、イスラム支配下のキリスト教徒(モサラベ)に伝承された西方ラテン聖歌。
概要
西ゴート王国期(5-7世紀)にトレドやセビリャで形成された独自典礼の聖歌で、東方的なメリスマと装飾、自由な旋法が特徴。イスラム支配下でモサラベ共同体により保持され、現在もトレド大聖堂のモサラベ礼拝堂で日々歌われる。
背景
イシドルス・ヒスパレンシス(560頃-636)らによってヒスパニア典礼として整備された地域聖歌伝統である。711年のイスラム征服以降、キリスト教徒はムラジディン(モサラベ)としてアル=アンダルスの中で典礼を維持し、北方再征服地域へも伝えた。多文化的環境のなかで保持された西ゴート的キリスト教霊性の証であり、地域アイデンティティと深く結びつく。
発展
11世紀末、教皇グレゴリウス7世とアルフォンソ6世によりローマ典礼が導入され、モサラベ典礼は周縁化された。1500年頃シスネロス枢機卿がトレド大聖堂内にモサラベ礼拝堂を設立し、写本を印刷整備して伝統を救済した。20世紀後半にも音楽学的研究と典礼書改訂が進み、写本のネウマが完全には解読不能ながら現在も実践が続く。
出来事
- 633: 第4トレド公会議、ヒスパニア典礼を体系化
- 1080: ブルゴス公会議、モサラベ典礼をローマ典礼に置換
- 1500頃: シスネロス枢機卿、モサラベ礼拝堂と典礼書を整備
- 1992: トレド大教区が改訂版モサラベ典礼書を発行
派生・影響
ガリシア・カスティーリャの民俗祈祷歌や中世カンティーガに旋律的影響を残したと推察され、近現代スペイン古楽復興運動の重要な一翼を担う。
音楽的特徴
楽器男声斉唱(無伴奏)
リズム自由リズム、装飾的メリスマ、独自旋法体系
代表アーティスト
- Schola Hungarica
- Ensemble Organum
代表曲
- Mozarabic Office for the Dead — Ensemble Organum (1995)YouTube で検索