Salsa
1960年代のニューヨークで、キューバのソンを基盤に成立したラテンダンス音楽。
What it sounds like
一度乗ると体が勝手に動き出す——サルサの推進力は、全パートが「クラーベ」という2小節のリズムの骨格に従うことから生まれる。クラーベには3-2か2-3の二通りがあり、どちらに揃えるかでうねり方が変わる。前面に立つのはコンガ、ボンゴ、ティンバレスといった打楽器の層。その上にピアノが細かく刻む反復パターン「モントゥーノ」が乗り、トランペットやトロンボーンのホーン(管楽器)が合奏で重なる。歌は独唱者(ソネーロ)とコロ(合唱)の掛け合いだ。テンポは1分間に150〜200拍とかなり速いが、踊るときの体感はおよそ半分。数字ほど忙しなくはない。歌詞はスペイン語で、恋愛や移民街の暮らし、政治を歌う。
How it came about
1960〜70年代、ニューヨークのスパニッシュ・ハーレム。プエルトリコ系・キューバ系移民の第二世代が、キューバ起源のソンやマンボ、チャチャチャを土台に、ルンバの要素も加え、それをジャズのビッグバンド編成と融合させた。キューバ革命後の対キューバ禁輸でラテン音楽の商業中心地はハバナからニューヨークへ移り、プエルトリコ系の音楽家たちが新しい顔となった。Fania Recordsが有力アーティストを次々に擁し、看板歌手のエクトル・ラボーや、社会派の歌詞を書いたルベン・ブラデスらとともに「サルサ」という名前を世界へ広めた。1971年にはファニア・オールスターズがマンハッタンのクラブ「チーター」を、73年にはヤンキー・スタジアムを満員にし、ニッチではなく大衆運動であることを示した。1970年代末からはコロンビア(とりわけカリ)やベネズエラが主要拠点となり、80年代にはエディ・サンティアゴやフランキー・ルイスらが甘い恋愛ものに特化した「サルサ・ロマンティカ」で人気を再燃させた。サルサはいまもラテン圏で鳴り続けている。
What to listen for
まずクラーベのパターンを耳で覚える(手で「タッ・タッ・タッ/タッ・タッ」と叩いてみる)。ピアノのモントゥーノが2小節でぐるぐる循環すること、ベースが拍の頭よりわずかに早く入る独特のうねり(「トゥンバオ」)に注目したい。管楽器(トランペットやトロンボーン)が歌の合間にパッと差し込む短い決め演奏も聴きどころだ。ここまで掴めれば、あとは体が拍を追いかけるだけだ。
If you only hear one thing
1曲だけ聴くなら、エクトル・ラボー&ウィリー・コロン《El Cantante》(1978、作詞作曲ルベン・ブラデス)。静かな歌い出しから熱狂的なモントゥーノへなだれ込む構成が、サルサの典型だ。アルバムなら、ウィリー・コロン&ルベン・ブラデス《Siembra》(1978)。300万枚超を売り、いまも史上最も売れたサルサのLPとされる。ダンス入門にはセリア・クルース《La Vida Es un Carnaval》——逆境を笑い飛ばし「人生はカーニバルだ」と歌う祝祭の歌で、底抜けに明るく、サルサの陽気さが一発で分かる(彼女の葬儀でも歌われた、人生を肯定する一曲だ)。ぐっと現代に寄せたいなら、世界的ヒットとなったマーク・アンソニー《Vivir Mi Vida》を——古典の様式を保ったままポップスとして通用する好例だ。
Trivia
「Salsa」はもとは「ソース/ふりかけ」の意味だ。「これはキューバ音楽?マンボ?チャチャ?」と細かく分類されがちだった曲を、まとめて売り出すための呼び名として、1960年代後半〜70年代初頭のニューヨークでレーベルが広めた言葉である。ティト・プエンテをはじめ複数のミュージシャンが「サルサは音楽ジャンルではない、料理にかけるソースのようなものだ」と語ってきた。
Hear the rhythm
The signature rhythm pattern of this genre. Press play to loop it, and follow the score below to see which beat is sounding.
Notable artists
- Celia Cruz
- Héctor Lavoe
- Willie Colón
- Rubén Blades
- Marc Anthony
Notable tracks
- Aguanile — Willie Colón (1971)
- El Cantante — Héctor Lavoe (1978)
- Pedro Navaja — Rubén Blades (1978)
- La Vida Es Un Carnaval — Celia Cruz (1998)
- Vivir Mi Vida — Marc Anthony (2013)
