Merengue
ドミニカ共和国の国民音楽。太鼓と金属製の打楽器が刻むリズムに乗って、止まらない高速2ステップで踊るダンス音楽。
What it sounds like
ドミニカ共和国生まれ、前へ進む2ステップが持ち味のダンス音楽。座って聴くより体を動かしたくなる推進力が身上で、およそ120〜160 BPM(速い「メレンゲ・ティピコ」ではさらに上がる)の2/4拍子に乗って、軽快なステップが踊り手の足を急かす。編成は二つの系統がある。素朴な「メレンゲ・ティピコ」ではボタン式アコーディオンが旋律を引っぱり、ビッグバンド編成の「メレンゲ・デ・オルケスタ」ではホーンセクションがその役を担う。リズムの土台は、膝に乗せた両面太鼓のタンボーラ。片手にスティック、もう片方は素手で叩く。さらに、金属製の表面を棒でこする打楽器ギラが、細かい音で隙間を埋めていく。そこにエレキベースとピアノが加わり、反復するパターンを固める。ヴォーカルは男性が中心で、力強くシャウト気味に歌う。歌詞はスペイン語で、恋愛やダンスから街の暮らし、政治風刺、自己賛美まで題材を選ばない。二つの打楽器が重なって独特のうねりを生み、踊らずにはいられない勢いをつくる。
How it came about
19世紀半ばのドミニカ共和国シバオ地方で、農村の踊りとして始まる。当初は植民地時代のヨーロッパ系上流階級から「下品」として嫌われていたが、1930年代に独裁者ラファエル・トルヒーヨが「メレンゲは国民音楽」と公式宣言し、政府主導で全国に広めた。1960〜70年代には、ホーン隊の振付と、よりアグレッシブなリズムを持ち込んだヨヘニー・ベントゥーラや、ビッグバンドを率いたウィルフリード・バルガスらが商業的に大成功。1980年代には、サント・ドミンゴ出身でバークリー音楽大学(ボストン)に学んだフアン・ルイス・ゲーラが、より旋律的で歌物寄りの洗練されたメレンゲを発展させ、国際的に輸出できる音にした。1990年代以降、世界規模のラテン音楽ブームでサルサと並ぶ国際ダンス音楽になった。
What to listen for
タンボーラが「タカタカ」と16分で細かく刻み、ギラが「シャカシャカ」と途切れずスクレイプし続ける――この二つの絡み。アコーディオンが短いフレーズを反復し、要所ではホーンセクションが全員そろって短く強調するフレーズ(いわゆる「キメ」)を入れる。歌い手の「ヘイ!」「ウォー!」という掛け声も聴きどころだ。ダンスは2拍子で右足・左足の単純なステップだが、腰の振りが命。
If you only hear one thing
まずメレンゲの「止まらない感じ」を一発で掴むなら、エルビス・クレスポ『Suavemente』(1998)。世界的ヒットで、ギラのシャカシャカと高速2ステップがそのまま体に入ってくる。メロディの美しさで入りやすいのはフアン・ルイス・ゲーラ『Ojalá Que Llueva Café』(1989)の表題曲。メレンゲ復興期を象徴する一作で、ダンス向けの典型的な高速メレンゲというよりフォーク色の強いメロディアスな曲だが、その温かさが新しい聴き手を一気に呼び込んだ。古典的なビッグバンド・メレンゲなら、政治風刺の代表例としてウィルフリード・バルガス『El Funcionario』。
Trivia
「Merengue」の語源は諸説あり定説がない。アフリカ起源説のほか、フランス語の「meringue(お菓子のメレンゲ)」に由来し、軽やかなものを指すとする説もあるが、確証はない。それでも、ふわりと軽い踊りのイメージが菓子の名と重なるのは、この音楽の身軽さを言い当てているようで面白い。トルヒーヨ独裁(1930〜61)時代には、上流階級から見下されていた庶民的な出自をむしろ前面に押し出し、政治的プロジェクトとして国民音楽に格上げする一方、他地域の音楽様式は抑え込んだ。暗殺後もその地位は揺らがなかった。
Hear the rhythm
The signature rhythm pattern of this genre. Press play to loop it, and follow the score below to see which beat is sounding.
Notable artists
- Alberto Beltrán
- Johnny Ventura
- Wilfrido Vargas
- Juan Luis Guerra
- Elvis Crespo
Notable tracks
- El Negrito del Batey — Alberto Beltrán (1954)
- Patacón Pisao — Johnny Ventura (1981)
- Ojalá Que Llueva Café — Juan Luis Guerra (1989)
- Suavemente — Elvis Crespo (1998)
- Capullo y Sorullo — Wilfrido Vargas (1980)
