Indie Rock
「売れる音」より「自分たちの音」を選んだギターバンドの系譜。あえて粗さを残す美学が核にある。
What it sounds like
アリーナを満たすような派手さより、曲づくりと手触りを優先するギターロック。テンポはBPM(1分間の拍数)で120〜170程度、ギター2本・ベース・ドラムの4人組が基本だ。歪みはメタルのような重い唸りではなく控えめで、コードは明るい響きと暗い響きを行き来して一筋縄ではいかないが、メロディそのものは口ずさみやすい。歌は鼻にかかった声、裏声(ファルセット)、かすれた声、語りかけるような歌い方が好まれ、絶叫は少ない。録音はテープのヒスやマイクが拾った部屋鳴り、小さな弾き間違いまでわざと残すか、逆に一音ずつ磨き上げて配置するか――どちらに振れても、メジャーロックの整え方からは外れている。
How it came about
インディーロックという呼び名が音そのものを指し始めたのは1980年代後半だ。米国と英国でほぼ同時に、メジャーレーベルに頼らないギターバンドの土壌ができた。米国では大学のラジオ局がそうしたバンドをかけて広め、英国では音楽誌NMEが1986年に配ったカセット集『C86』が同種のシーンを束ねた。米国側では、語りかけるような脱力した歌が持ち味のPavementや、宅録の手触りを残したSebadohが代表格。英国側では、きらきらと鳴る軽やかなギター(ジャングリー)のC86勢が中心だった。同じころ隣接して現れたバンドは、それぞれ別のジャンルへ枝分かれしていく。My Bloody Valentineはシューゲイザーへ、Stone Rosesはマッドチェスターへ、Pulpは1990年代半ばのブリットポップへ。チェンバーポップ寄りのMagnetic Fieldsも、この時期のカルト的名手として影響を残した。2000年前後、ニューヨークのThe Strokesがざらついた4人組の音で「ギターバンドはまだ売れる」と証明し、リバイバルの口火を切った。やや遅れて2000年代半ば、英国からは早口の語りで日常を描くArctic Monkeys、踊れるリズムのFranz FerdinandやBloc Partyが台頭する。2010年代は三者三様だ。The Nationalの陰鬱、Vampire Weekendの異文化折衷、Arcade Fireの大編成が、それぞれ「インディー」の輪郭を押し広げた。サイケポップを出発点に電子音へ踏み込んだTame Impalaのように、ロックの枠をはみ出す例も現れた。いまはBlack Country, New Roadの混沌、Wet Legの無表情、Big Thiefの繊細さへと裾野が広がっている。
What to listen for
ギター2本の役割分担に注目したい。一方がコードを支え、もう一方が高音弦で対旋律を奏でる。ハーモニーが薄いか豊かか、そのバランスにも耳を傾けたい。ドラムが「素人っぽさ」をあえて残しているのか、それともきっちり整えているのか、を聴き比べるのも面白い。歌詞の私的さ・文学性も大きな特徴だ。ライブで観ると、メジャーロックのような派手な演出がなく、楽器を弾くこと自体に集中する空気がある。
If you only hear one thing
最初の1曲はPavement『Cut Your Hair』(1994)、気だるい90年代の手本だ。続いてThe Strokes『Last Nite』(2001)、2000年代リバイバルの口火。アルバム1枚なら、Vampire Weekend『Vampire Weekend』(2008)が21世紀の「インディー」の幅を見渡せる。日本ものなら、ナンバーガール『鉄風 鋭くなって』(2000、てっぷう するどくなって)――国内のインディーが独自に磨き上げた切れ味がある。
Trivia
「Indie」は元々、単に「Independent」(独立系レーベルから出ている)という契約上の事実を指す言葉だった。だが2000年代以降、音色やプロダクションのスタイル(粗いギター、語りかけるような歌)そのものを指すジャンル名に変質した。皮肉にも現在の「インディーロック」バンドの多くはメジャーレーベルに所属している。
Hear the rhythm
The signature rhythm pattern of this genre. Press play to loop it, and follow the score below to see which beat is sounding.
Notable artists
- Pavement
- The Strokes
- Arcade Fire
- The Killers
Notable tracks
- Cut Your Hair — Pavement (1994)
- Last Nite — The Strokes (2001)
- Mr. Brightside — The Killers (2003)
- Wake Up — Arcade Fire (2004)
- Range Life — Pavement (1994)
